横須賀市内どぶ板通りでの米兵同士数人の乱闘騒ぎが報じられた。
報道では、何やら沖縄駐留兵士の非行にも似たニュアンスを言外としていたが、この程度の喧嘩が全国放送に値するものとは思えない。
この程度の騒ぎはベトナム戦争当時のどぶ板通りでは日常茶飯事、海上自衛隊でも一帯を立入禁止にしていたほどで、一般市民も余程のことが無い限り近付かなかったように思う。そんな背景から、夜間には海軍のSPが常時巡回していたが、近年では一般市民も安全に通れるように変化しビジネスホテルまで建っているので、SPの姿も見かけなくなっている。
ちなみに、ネットで「SP」を検索してみたら、《standard playing record》1分間78回転のレコード、《save point》セーブポイント(野球用語)、《security police》1975(昭和50)年警視庁に設置された要人警護のための警官・・・で最後の方に《shore patrol》米国海軍憲兵隊と出てきた。
しかしながら、SPは司法権を持つ憲兵(MP:Military police)ではなく、歓楽街等における水兵の風紀を取り締まるためのもので、海上自衛隊で使用する「巡察隊」が適当である。
SP若しくは巡察隊は、乗組員や陸上基地勤務者で臨時に編成され、自衛隊の艦隊集合では自衛官が、米軍艦隊の寄港地では米軍が、日米共同訓練時等では日米混合で行われる。自分の経験でもグアムやハワイで日米が合同してSPを編成派出したことがある。
装備は号笛と警棒のみであるので、力不足と思われるかもしれないが、アメリカ人の特質・習性を知ってみるとこれで十分である。
ハリウッド映画でも、取集のつかないほどの乱闘騒ぎでもMP(憲兵)やSPの笛が鳴り響いた途端、当事者は雲の子を散らすように逃げ出す様が描かれるし、ギャングに対しても「警官に手を出すとお終いだゾ」が決まり文句である。
米国人は、任務遂行中の人間に対して暴力を振えば罪が数倍になることを知っており、軍人の場合には説諭・注意程度で済まされる喧嘩であっても、MPやSPのように任務に当っている者への暴力は軍法会議にかけられ重営倉、最悪の場合は不名誉除隊(免職)に発展する行為である。
過去に目撃した事例では、グアムの水兵クラブで足を投げ出して腰かけている水兵の足をSPが物も言わずに蹴り飛ばしていたが蹴られた方も反抗の素振りすら見せなかったし、呉港では喧嘩していた水兵同士が仲良く金網付きのSPトラックに大人しく収容されていた。
兵隊に甘いとの声が聞こえてきそうであるが、この程度のトラブルは文化の違いであり、日本人に被害が及ばない限り笑って済ませるのが賢明と思う。また、今回の乱闘でもSPが到着すればたちどころに収まったように思う。
日本でも、職質に当っていた警官を車で引きずった事例や、逮捕される際に「暴力は止めて」と訴える映像が流れて、任務執行者に対する軽視の風潮があるが、公務執行妨害罪は罪3等程にまで加算・重視することが必要ではないだろうか。