知床観光船の引上げが難渋しているが、遭難者の捜索・救助体制に関する問題も一部で取り上げられれている。
議論されているのは、海保ヘリコプターの現場到着に3時間超を要したことである。
海保の説明によると、事故が起きた4月23日13時13分に救助要請の118番通報受信、9分後の13時22分釧路航空基地に出動指示が出されたが、釧路基地所属ヘリ2機のうち1機は整備中で他の1機も別の任務に当たっていたため、任務中のヘリを呼び戻して燃料補給と機動救難士2名を乗せて離陸、現場到着は16時30分であったとされている。
海保のヘリに依る救難体制は、全国に点在する10基地から半径185Km圏内を「1時間出動圏」と設定して、通報から1時間以内で現場に到着できる範囲としているが、北海道では機動救難士が待機しているのは、事故現場から直線距離で450㎞離れた函館航空基地のみで知床を含む道東や道北は「圏外」であった。
今回の教訓から海保は、救難ヘリと機動救難士の増強や救難基地の拡充を図って「エアレスキュー空白地帯」解消を目指すとしているが、基地の増設、装備の取得、要員の養成の必要があることから空白地帯解消には早くても2・3年は掛かるように思える。
航空機の運用と海保の基準を知らないので、ヘリが離陸するのにどれくらいの時間がかかるのだろうかは分からないが、海保には空白地帯解消と費消時間短縮のために頑張って欲しと願っている。
海自艦艇は整備・休養のための純停泊中であっても「機関始動までの時間を逆算した機関待機」の基準が定められており、機関待機が発令されていない場合でも復旧に長時間を要する修理作業は片軸ごとに行って、1軸は使用できる状態に維持しておかなければならない。また、乗員の上陸区域も概ね2時間以内に帰艦できる範囲に留められていることから、艦艇は2時間程度で緊急出港できる状態で停泊している。
台風接近の場合等で緊急出港の度合いが高い警戒停泊中にあっては「機関待機」が令され、最も緊急性の高い「機関即時待機」では、機関は始動可能な状態に維持され、乗員も艦内若しくは部署に配置した状態で待機する場合もある。
一般家庭でも、旦那が出先から電話で「何時でも出かけられるようにしておけ」と家族に伝えることがあると思う。「機関即時待機」はまさしく同様な手順であるが、一つだけ異なる点は「家族(機関員)」が不平を漏らすことが許されないことである。