もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ドイツとフィンランドを学ぶ

2022年05月12日 | 歴史

 ドイツの混乱とフィンランドのNATO加盟加速が伝えられている。

 ドイツでは、ショルツ首相の支持率が急落するとともに、自身が率いる与党第1党で中道左派の社会民主党が地方選挙で大敗する等、今後の政権運営にまで黄色信号が点滅し、特に内閣支持率は39%と3週間で12%も急落したとされ、その原因はウクライナへの兵器供与を巡る首相の逡巡・煮え切らない態度と分析されている。
 ショルツ首相は2月末に「紛争地に兵器を送らない」とする戦後ドイツの国是を見直してウクライナへの兵器供与を決めたことで一時的に国民の支持を得たものの、ポーランド等の大規模・近代兵器の供与に比べてドイツが供与を決めた「ゲパルト自走対空砲50台」はウクライナ側から「40年前の兵器ではないか」と冷ややかに反応されて首相自身とドイツの面目を失墜させる結果となった。
 また、社会民主党の重鎮であるシュタインマイアー大統領の訪問がウクライナから拒否されたことも大きく影響し、同党がこれまで主張・推進して来た親露政策では西側諸国の同意を得られないと国民が結論付け・見限った結果とも見られている。

 フィンランドは、冷戦下でのフィンランド化(外交)、ソ連崩壊後の軍事的中立を保ちながらEUに加盟するという独自路線に決別して、スェーデンとともにNATO加盟に転舵した。
 フィンランドと云えば、日本よりやや狭い国土に日本の1/20にあたる550万人が暮らす国で、世界幸福度ランキングでは常に上位にランクされるという国であるが、国防予算はGDPの1.5%を占め、18歳以上の男子には徴兵による兵役義務が課せられている世界には残り少ない国でもある。
 フィンランド軍は、陸16,000人,海3,500人,空2,700人とされるが、徴兵・予備役制度によって有事動員可能兵力は約28万人(国民の5%)とされている。日本の有事動員可能数が、自衛官25万人に予備自衛官(定員5万人/充足率70%で実質3.5万人)、即応予備自衛官(定員8,175人/充足率60%で実質0.5万人)を加えて約30万人(国民の0.3%)であることから考えると、軍事同盟に依らずに国の独立を守るためには多くの国民の奉仕・犠牲が必要であることが分かる。それとても、ウクライナ事変が軍事大国の横暴に対して小国の個別自衛力には限界があることを明らかとしたように、NATO加盟による集団安全保障体制への移行は独立維持のための究極の選択であるように思える。

 日本でもファンの多いドイツ・フィンランドであるが、両国の現状を見る限り「異政体との共生」「等(全)方位外交/経済」は理想ではあっても夢想に近いもので、共感する主張・政体に与する・与せざるを得ないのが世界基準であるように思う。もし、全ての国と共生しようとすれば、全ての国と戦う決意と準備が必要であるように思える。
 隣国でも、国民が「異政体との共生からの決別」を選択したように受け止めているが、果たしてどうなるのだろうか(一朝一夕には無理かも)。