もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

「サルバトール・ムンディ」再び

2022年05月24日 | 美術

 テレ東の番組で、ダヴィンチ「若きキリスト像」のその後を知った。

 2017年11月17に「ダヴィンチ508億円」と題して、「サルバトール・ムンディ(救世主)」を「52円切手1枚の面積で約2000万円。落札者は公的な美術館ではなく大富豪の収集家もしくは投機を狙ったオイルマネーファンドか?」と投稿したが、テレ東の番組で、落札者(現在の所有者)がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン王太子であることを知った。また、名画は現在まで一般公開されていないが、近い将来「ルーヴル・アブダビ美術館」で公開される予定であるらしい。「ルーヴル・アブダビ?」と不審に思ってWikipediaで調べると、アラブ首長国連邦観光の目玉としてアブダビの文化地区に開設されたもので、世界唯一のルーヴルを冠した姉妹館とされていた。
 ここで、最貧民の常として金銭に関する話題を拾い集めると、「サルバトール・ムンディ」の落札額508億円の中からオークション主催者クリスティーズは手数料として約60億円を手にしているらしく、また、展示が予定されているルーヴル・アブダビ美術館についても、「ルーヴル」名使用料は約530億円の高額で、しかも使用期間は30年間の限定であるらしい。その他にも、想像であるが名画の輸送・保管・警備・保険等には相当な金額が掛かったものと思えるし、ルーヴル・アブダビ美術館が「サルバトール・ムンディ」を展示するためにはサウジ王太子に相応ではあるが莫大な借用料が支払われることだろうと思える。以上のことから、名画には既に2000億円を超える金銭が飛び交っているように思える。
 一方、「サルバトール・ムンディ」について、自分が投稿した時点ではダヴィンチの真筆と報じられていたが、ロンドン・ナショナルギャラィやルーヴル美術館も偽物・贋作とはしないものの、真筆鑑定は保留し、一部には「ダヴィンチ工房」の作品との見方も残されているので、現在の評価は「ダヴィンチ風絵画」の状態に留まっているようである。
 誰も値を付けることができないが、ポプラ板に描かれているために「世界一高価な板」とされる「モナリザ」。近年取引された絵画では空前の価格であった「サルバトール・ムンディ」。泉下のダヴィンチはどのような思いで一連の「ラプソディ」を視聴されているのだろうか。
 最後に、山口県の誤送金問題に疲れた耳目を癒されんことを願って、「サルバトール・ムンディ」を再掲します。


豪・韓・日を考える

2022年05月22日 | 与党

 オーストラリアの総選挙で、アルバニージ氏率いる野党の労働党が勝利し9年ぶりに政権が交代する。

 モリソン首相は、在豪華僑のロビー活動禁止、孔子学院の活動制限、クワッド構築、AUKAS・原潜導入等によって、中国との決別を推進してきた。総選挙を制した労働党も外交・防衛政策はモリソン政権の方針を継承するとして選挙戦を展開していたために、直ちには新政権=親中国回帰とはならないとみられているが、労働党の重鎮には親中派が多いとされていることから、何らかの紆余曲折も予想されている。
 特に、モリソン政権の敗因の一つが、ソロモン諸島の対中安全保障協定締結を阻止できなかったこととされていることから、もはや親中回帰を図ることは不可能な民意が示されたと理解すべきかもしれない。
 ともあれ、24日から日本で開催されるクアッド首脳会合で、アルバニージ氏が新首相として出席する見通しとされているので、何らかのシグナルは得られるだろうと思っている。
 また、モリソン政権敗北には、労働党の物価抑制対策や最低賃金の引上げ公約も大きかったとされるが、物価高騰の原因は主としてロシアのウクライナ侵攻に伴う食品原材料不足と世界経済の混乱に依るもので、若しアルバニージ新政権が親中に回帰したならば中国は居ながらにして漁夫の利を得ることになる。そうなれば、習政権はウクライナ事変による先進国の物価高騰を勢力伸長の強力な武器として活用するために、更なる混乱の拡大と継続のためにロシア支援を拡大することも予想される。

 韓国の尹錫悦大統領は、米韓首脳会談に臨むにあたり歴代政権が推進していた「安全保障はアメリカに、経済は中国にそれぞれ依存する」という曖昧な「安米経中」外交を廃して、「安も経も米」に転舵することを表明した。とはいっても、国会では「嫌米日・親中北」が大勢を占めていることから転舵は容易ではないだろうし、腰砕けとなって「信用できない韓国のまま」となる危険性も腹蔵しておく必要があると思っている。

 オーストラリアと韓国の今後について書いたが、「安米経中」の気配が濃厚である日本で各政党の参院選公約が出始め、興味を以って眺めているが、世界的な軍事危機にあっても相も変わらず「経済・暮らし向き」公約が目白押しで、一部の世論も歓迎している感がある。
 いまこそ、「児孫のために美田を買わず」とした南洲翁、「米百俵」の小林虎三郎翁の気概・遺訓が生かされるべき秋と考えるのだが。


寒々しい話題

2022年05月21日 | 社会・政治問題

 北九州市でタバコのポイ捨てを繰り返した50代会社員が書類送検された。

 ニュースでは、検挙に貢献した清掃ボランティアの男性(74歳)に感謝状が贈られたことにスポットが当てられており、男性は3年間も道路の清掃活動をされているとされている。
 ところが、1年ほど前から同じ銘柄の吸い殻が同じ場所に大量に捨てられているのを発見した活動家が、手製看板や拾った吸い殻を集めたペットボトルを置いて注意喚起したものの、改善されないために警察と協力して「犯人」を特定したとされている。
 ボランティア活動家の行為は、将に美談でホッコリさせられるが、寒々しいのは送検された50代会社員がポイ捨てを続けた動機を「誰かが吸い殻を片付けていることを知ってから、(ポイ捨てに)開放感を感じた」と述べていることである。
 2002(平成14)年に東京都千代田区が、ポイ捨てを含む路上喫煙防止条例を施行したのを皮切りに、現在では、略全部の自治体で同種の条例が施行されているものと思っている。社会の底辺に生き、かつ禁煙2時間が限度の自分でも、外出時には公設の喫煙所を探したり、ホテルの喫煙所に駆け込んで凌いではいるものの、切羽詰まって禁煙区域以外で已む無く携帯灰皿に頼ったこともあるが、近頃は吸い殻を捨てようと思ったこともなく、ましてや清掃する人に「ざまァ見ろ」的な解放感を持つことはない。
 件の50代中年の動機からは、常人には理解できない闇が窺い知れるものであるが、余程のストレスに晒された日常を送っているのだろうと一部で同情を覚える反面、何とか直して「必死にルールを守っている喫煙者の顔に泥を塗らないで欲しい」と願うものである。

 ドクトル・マンボウ北杜夫氏は著作の中で、「原因不明の症状が出たら大学病院に行け。治療法は分からなくても病名だけは付けてくれる」と笑わしているので、50代会社員の行為も1種の病気で、それも大学病院で受診すべき病であるのかもしれない。
 一部のボランティアの独善や押し付けに鼻白むケースもあるが、暑熱・寒風を厭わずに奉仕される人に対しては、敬意を払うべきであろうと改めて思い知らされたニュースであった。


マスク屋外着用不要?

2022年05月20日 | コロナ

 政府の感染症対策分科会の有志?が「条件付ながら屋外でのマスク着用は必要ない」との見解を示したとされる。

 有志は、中国コロナ感染者が高止まり状態ながらも、医療機関が対応可能な水準で推移していること、ワクチン接種が一定の効果を上げていること、夏に向かい熱中症対策の必要があること、等の要因を挙げているが、例によってメディアはレアケースを取り上げて「この場合はどうか?」的論調で報じている。
 諸外国と異なり日本でのマスク着用は、罰則付きの法的義務ではなく政府の要請や自治体の指導に基づく自制と雇用者・事業者などの自主規制で行われている。2019年初頭以来、飛行機から降ろされた者、議場の出席・発言を拒否された者、飲食店での小競り合い、ノーマスク・デモ等が報じられたものの、まァ自宅以外でのマスク着用は定着しているように思える。
 「コロナに罹って死んだとしてもそれだけのこと」と思い定めている自分でも、既にマスク着用は習慣となっているが、政府が要請するからと考えたことはない。では、何故にマスクを着用しているかと問われたら、同席したり道ですれ違う人の冷ややかな視線に抵抗する・逆らう気概がなく、周囲との軋轢を避ける意味合いが全てと答えざるを得ない。想像であるが、現在マスクを着用している人の多くが、多かれ少なかれ自分と同じような意見であるのではないだろうか。このように、「人の目を気にしてのマスク着用」が主流であると思えば、政府がマスク不要と宣言しても、一斉にマスクを外すことは考えられず、マスクを外した人への視線が穏やかになるまでには相当な期間が必要になることだろう。

 どのような理由からであれ大多数の国民がマスクを着用したことが、中国コロナ被害局減要因の一つになったことは否定できないように思うが、意地悪く考えれば「大人しくマスクを着用したことは、後世に負の遺産を残した行為」とも解釈できるのではないだろうか。マスク着用を忌避する国では、戒厳令に準じた外出禁止令を発動したり、罰則付きのマスク着用法を急遽制定したり、野戦病院を開設したり、と対処した国も多い。更には国が主導してワクチン開発を加速させた例、大規模な防疫部隊が活動した例、等も報じられているが、日本では全国民の自主的なマスク着用でパンデミックを局限し得たために、外出禁止令等の強制手段、資源の集中法、防疫部隊・・・等が無くても「何とかなる」という悪しき教訓を政府・国民が持って、「喉元過ぎれば」の例え通りで次に備える努力を放棄してしまいかねないように思える。
 現に、それらを改変しようとする動きを「火事場泥棒的」とする勢力もあるが、「泥棒を見て縄を綯う」よりは建設的・前向きと思うのだが。


阿武町誤送金と「ten minute standby」

2022年05月19日 | 社会・政治問題

 山口県阿武町の新型コロナ給付金4,630万円の誤振込み事件で、返金しなかったT氏が逮捕された。

 世の中の大勢は逮捕されたT氏を糾弾しているが、誰でも市役所から5千万近い金が振り込まれたら一瞬「生涯で二度と起こらないであろう。自分のものにできないか」と考えるに違いないと思っている。
 確かに、10日間のうちにネットカジノで全額使い果たしたとするT氏の行動は犯罪であろうが、恬として被害者然と振舞う町長・役場幹部にも『?』を感じる。
 これまでのT氏の素行・性向については報道以上のことは知らないが、誤振込みが無ければ、T氏が逮捕されることも残りの人生に汚点を残すこともなかった可能性がある。そう考えれば、町役場は5千万円の公金を失う以上に、1人の善良な町民を犯罪者に貶めるとともに残りの人生を奪ったことになり、公費の損失挽回の責任以上の道義的責任を表に出してもらいたいと思う。
 補給艦で米軍艦船に燃料の洋上補給をした。
 自衛艦への給油は、各艦からの請求量が極めて正確であるために請求量の全量を補給艦が主導して給油するが、米艦の請求は大雑把で7~8割方給油した時点で受給終了を告げられることも茶飯事であった。そんなこともあってか、米軍では海自と異なり受給艦が給油作業をコントロールする遣り方である。給油終了時の予告については海自艦には補給艦から「送油終了〇分前」と予告するが、米艦では受給艦が「ten minute standby」と予告してくる。勿論、大雑把な米艦であれば10分前ではなく予告直後に「ポンプ停止・受給終了」とされる場合も度々で、予告の真意は「そろそろ給油を止める準備をしろ」であると理解していた。

 今回の阿武町の誤振込みの原因は、役場の会計担当者が振込手続きをミスしたことは明らかとされている。今後、町役場で再発防止のルール作りや手続きの見直しが行われると思うが、各担当者が一連の書式を整え終え「enter」キーを押す前に、「ten minute standby」と自分に予令・予告することを心掛けてはいかがだろうか。
 「作業の終末に来ているが、間違いはないか?。指示された内容に合致しているか?。」を自問し見直しを促す標語として、「ten minute standby」は洒落たフレーズであるように思えるが。さて