「車いすでも当たり前にバスに乗れるようにしたい」-。体が不自由で車いすを利用している東京都目黒区の会社員鈴木泰之さん(42)は、バス会社をまわり、運転手を対象に乗降時のスロープ板の設置方法や車内での車いすの固定方法などを講習する活動を続けている。一方で、身近なバリアフリーの実現を国などに訴えた訴訟の判決が三十日に控えており、「裁判が車いすの安全に目を向けてもらう機会になれば」と話している。 (松村裕子)
鈴木さんは二十四歳のとき、プールで非常勤指導員をしていて、飛び込みで誤って底に頭を打ち付け、首から下が自由に動かせない重度の障害を負った。
バスを利用し始めたのは五年ほど前。「当初は、乗せてもらえるだけで感激し、車内に車いす固定器具やシートベルトがあることさえ知らなかった」という。車内では介護者に車いすを押さえてもらったが、右折の際、「車いすが吹っ飛びそうになった」という体験もした。
バス会社に出向いて講習するのは、三年前の出来事がきっかけ。都内の路線バスの運転手が、スロープ板の設置に手間取って乗車に約三十分もかかった上、カーブや停止時に車いすが動きだすなど危険な目にも遭った。後日、バス会社に苦情を伝えた際、やりとりの中で車いす固定器具の存在を知った。
バス会社は運転手の研修会で、車いす固定器具とシートベルトの使用方法も指導していた。だが、車いすの客を乗せたことのない運転手もおり、装備の必要性がよく理解されていなかった。
鈴木さんは、多くの運転手に思いを伝えたいと、講習会を提案。同社を手始めに、二〇〇五年十一月から都内や神奈川県の十八社で講習会を重ねた。スロープ板の設置方法や、車いすの壊れやすい部位を避けて固定器具を取り付けることなど、車いす利用者でなければ分かりにくい留意点も指摘する。
しかし、固定器具などを使用しない運転手もまだまだ多い。鈴木さんは「器具の存在を知らない障害者もいるので、『使いますか』と声をかけて」と注文する。車いす利用者にも「安全面を考えれば、断らずに利用して」と呼びかけている。
東京地裁で判決を迎える訴訟で鈴木さんは、親類宅近くのバス停をめぐり「道路幅が狭いためバスのスロープ板が出せず、乗降時に不利益を被った」と主張し、国とバス会社に損害賠償を求めている。判決の行方にかかわらず、鈴木さんは引き続き、バリアフリーの実現を訴えていく考えだ。
鈴木さんは二十四歳のとき、プールで非常勤指導員をしていて、飛び込みで誤って底に頭を打ち付け、首から下が自由に動かせない重度の障害を負った。
バスを利用し始めたのは五年ほど前。「当初は、乗せてもらえるだけで感激し、車内に車いす固定器具やシートベルトがあることさえ知らなかった」という。車内では介護者に車いすを押さえてもらったが、右折の際、「車いすが吹っ飛びそうになった」という体験もした。
バス会社に出向いて講習するのは、三年前の出来事がきっかけ。都内の路線バスの運転手が、スロープ板の設置に手間取って乗車に約三十分もかかった上、カーブや停止時に車いすが動きだすなど危険な目にも遭った。後日、バス会社に苦情を伝えた際、やりとりの中で車いす固定器具の存在を知った。
バス会社は運転手の研修会で、車いす固定器具とシートベルトの使用方法も指導していた。だが、車いすの客を乗せたことのない運転手もおり、装備の必要性がよく理解されていなかった。
鈴木さんは、多くの運転手に思いを伝えたいと、講習会を提案。同社を手始めに、二〇〇五年十一月から都内や神奈川県の十八社で講習会を重ねた。スロープ板の設置方法や、車いすの壊れやすい部位を避けて固定器具を取り付けることなど、車いす利用者でなければ分かりにくい留意点も指摘する。
しかし、固定器具などを使用しない運転手もまだまだ多い。鈴木さんは「器具の存在を知らない障害者もいるので、『使いますか』と声をかけて」と注文する。車いす利用者にも「安全面を考えれば、断らずに利用して」と呼びかけている。
東京地裁で判決を迎える訴訟で鈴木さんは、親類宅近くのバス停をめぐり「道路幅が狭いためバスのスロープ板が出せず、乗降時に不利益を被った」と主張し、国とバス会社に損害賠償を求めている。判決の行方にかかわらず、鈴木さんは引き続き、バリアフリーの実現を訴えていく考えだ。