交通事故で両手・両足が不自由になりながらも、川柳と書を通じて日常生活を見つめている上村(かみむら)みや子さん(61)(真岡市)の初の個展「ふりむけば~上村みや子川柳展」が、真岡駅の真岡市情報センター2階で開かれている。奇をてらわない表現が人々の共感を誘っている。上村さんは「一つ一つの言葉が私の手となり足となり、たくさんの人と出会うことができた」と話している。
<動かない手足が頼る車椅子(いす)>
30歳の時、車同士の衝突事故で頸椎(けいつい)を損傷した。治療を続けても手足が動かず、半年後、主治医から「神経の回復は見込めない」と言われて泣きわめいた。看病していた母ヤスさん(90)は、いたたまれず病室を飛び出した。
長女(6)、長男(3)、次男(2)(年齢は当時)を抱え、絶望の淵に立たされた。夫盛一(もりいち)さん(62)から「できることはフォローするから、母親として生きていけ」と励まされ、1年半の入院リハビリを経て自宅に戻った。
<嘆きから救ってくれた趣味ひとつ>
手先に力が入らなかったが、数回の手術で左手は何とか動くようになった。家事をしようと、機械類のスイッチを口で押したり、洗濯ばさみは歯で開いたりして頑張った。モップを車いすに固定して床掃除もした。
15年前、夫の知り合いの書家が自宅の旧店舗で書道教室を開いた。書家は川柳会の顧問でもあり、書と川柳を習い始めた。
多い時は三つの川柳会に所属し、毎月30句以上を同人誌などに投稿した。なかなか外出できないため、会話をした相手の体験を自分の体験のように表現することもある。
7~8年前から、気に入った句を短冊に書き始めた。両手で筆を固定し、墨を置くようにゆっくり仕上げる。1枚書くのに15分はかかるが、盛一さんは「真綿を紡いだような(洗練された)言葉を多くの人に見てもらいたい」と応援する。
<ふりむけば母が見ている笑ってる>
長女美穂子さん(36)の気持ちを思って作った句だ。美穂子さんは中高時代、みや子さんの介護をしながら2人の弟の弁当を作ってくれた。初の個展のために、仕事を辞めてアメリカから帰国してくれている。
盛一さんについて、みや子さんは「思いやりがあり、優しい心を持っている。私の最大の理解者の一人」と感謝している。
◇
川柳展では、短冊やヒョウタンに書いた川柳約180句を展示している。市情報センターは16日まで(月曜休館)、二宮コミュニティセンターは8月31日~9月4日、県総合文化センターは9月17~21日。「背景にある思いを受け止めて読んでいただきたい」とみや子さんは話している。
不自由な手で書いた川柳の初の個展を開いている上村みや子さん
(2012年8月13日 読売新聞)
<動かない手足が頼る車椅子(いす)>
30歳の時、車同士の衝突事故で頸椎(けいつい)を損傷した。治療を続けても手足が動かず、半年後、主治医から「神経の回復は見込めない」と言われて泣きわめいた。看病していた母ヤスさん(90)は、いたたまれず病室を飛び出した。
長女(6)、長男(3)、次男(2)(年齢は当時)を抱え、絶望の淵に立たされた。夫盛一(もりいち)さん(62)から「できることはフォローするから、母親として生きていけ」と励まされ、1年半の入院リハビリを経て自宅に戻った。
<嘆きから救ってくれた趣味ひとつ>
手先に力が入らなかったが、数回の手術で左手は何とか動くようになった。家事をしようと、機械類のスイッチを口で押したり、洗濯ばさみは歯で開いたりして頑張った。モップを車いすに固定して床掃除もした。
15年前、夫の知り合いの書家が自宅の旧店舗で書道教室を開いた。書家は川柳会の顧問でもあり、書と川柳を習い始めた。
多い時は三つの川柳会に所属し、毎月30句以上を同人誌などに投稿した。なかなか外出できないため、会話をした相手の体験を自分の体験のように表現することもある。
7~8年前から、気に入った句を短冊に書き始めた。両手で筆を固定し、墨を置くようにゆっくり仕上げる。1枚書くのに15分はかかるが、盛一さんは「真綿を紡いだような(洗練された)言葉を多くの人に見てもらいたい」と応援する。
<ふりむけば母が見ている笑ってる>
長女美穂子さん(36)の気持ちを思って作った句だ。美穂子さんは中高時代、みや子さんの介護をしながら2人の弟の弁当を作ってくれた。初の個展のために、仕事を辞めてアメリカから帰国してくれている。
盛一さんについて、みや子さんは「思いやりがあり、優しい心を持っている。私の最大の理解者の一人」と感謝している。
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川柳展では、短冊やヒョウタンに書いた川柳約180句を展示している。市情報センターは16日まで(月曜休館)、二宮コミュニティセンターは8月31日~9月4日、県総合文化センターは9月17~21日。「背景にある思いを受け止めて読んでいただきたい」とみや子さんは話している。
不自由な手で書いた川柳の初の個展を開いている上村みや子さん
(2012年8月13日 読売新聞)