国内に住む全ての人に12桁の番号を割り当てるマイナンバー制度の番号通知が順次始まり、兵庫県内でも間もなく各家庭に届くが、重度の視覚障害者の間で、番号を認識できるのか不安が広がっている。通知カードの番号には点字表記がなく、読み上げてもらう必要があるが、番号はみだりに教えられない個人情報でもある。こうした問題を想定していなかった総務省は「自治体できめ細かくサポートしてほしい」と市町村に対応を求める。
通知カードは簡易書留で郵送され、県内でも近く配達が始まる。封筒には中身が通知
カードであることを知らせる点字表記があるが、カード自体に点字表記はない。
視覚障害者は1人暮らしや、夫婦とも目が不自由という人も多い。視覚障害者団体「眼の会」(神戸市西区)代表の榊原道眞(みちまさ)さん(62)は「ヘルパーさんに読んでもらうとしても、信頼関係がなければ頼めない」と話す。
総務省は「カードにはスマートフォンなどで読み取ると音声で番号が読み上げられるコードを付けている」と強調するが、榊原さんは「結局、見える人に読み取りを手伝ってもらう必要がある」と指摘する。
神戸市には、実際に視覚障害者から不安が寄せられているといい、担当者は「『誰かに補助をお願いして』と言うしかない。総務省には『なぜ十分な配慮がないのか』と問い合わせたが、答えはなかった」と話した。
総務省住民制度課は「既に通知が始まっていて、カードの仕様は変えられない。全国一律ではなく、各自治体がきめ細かく対応してもらえたら」とする。
榊原さんは「視覚障害者は大事な情報は読み上げた声を録音して保管する。行政には、希望者にはプライバシーに配慮した形で番号を読み上げるなどの対応もお願いできないか」と提案する。
一方、通知カードを配達する郵便局は、重度視覚障害者として登録している世帯には点字の不在票を入れる予定で、日本郵便は「放置されるようなことにはならないと思う」としている。
【国は基本ルール示すべき】
関川芳孝・大阪府立大教授(社会福祉法制論)の話 カード発送後の障害者の番号保管や扱いについての配慮が議論されていない印象だ。視覚障害者だけでなく、知的障害者や認知症の人が入居する施設などでも、番号の保管・扱いに混乱が起きるのではないか。今後の対応は、市町村ごとに異なれば当事者の不安が増す。国が基本的なルールを示すべきだ。
郵便局の配達員からマイナンバー制度の番号通知カードが入った簡易書留を受け取る住民。全国各地で順次配達が始まっている
2015/11/2 神戸新聞