芦屋市の視覚障害者らが22日、西宮市で初めて落語の上演に挑戦する。社会人落語家の公演に通ううち、「やってみたい」という思いに駆られ、高座に上がることに。所作を自分で確かめにくいことなどハンディはあるが、笑いに包まれる会場を思い、稽古に励んでいる。
西宮市を拠点にする視覚障害者の親睦団体「楽喜(らっきー)の会」のメンバー4人が出演する。「素人落語 我楽多(がらくた)の会」が、同市で開く落語会の常連客だ。
今春、メンバーの吉川隆史さん(42)=芦屋市=が懇親会に同席していた我楽多の会代表、風流亭半丸(せみまる)=本名・奥薗稔=さん(52)に「お酒の勢いで落語通ぶった」のが、そもそものきっかけ。とんとん拍子で話が進み、我楽多の会主催の公演への出演が決まった。
しぐさが重要な要素となる落語は、視覚障害者にとってハードルが高い。上方落語協会加盟の落語家236人のうち視覚障害者は2人だけという。
半丸さんの“弟子”となり、半丸亭寿近(せみまるていじゅにあ)の名前をもらった吉川さん。鍼灸(しんきゅう)マッサージ師の仕事の傍ら、古典落語「禁酒関所」を稽古する。視野の中心部が見えず、周りの視力も弱いため、「目線のコントロールが難しい」と苦労しつつ、「演じることで、あらためて落語の面白さが分かった」と笑顔を見せる。
長年の落語ファンという、京都市のNPO法人職員大森敏弘さん(54)はエクセル亭さく作の名で、桂文枝さんの創作落語「宿題」を演じる。「怖さはあるが、楽しく演じられたらいい」と話す。
ほかに、高座の経験がある呆(ぽ)っ人(と)=本名・宮永真也=さんの「時うどん」、障害はないが共に落語を学ぶ日本ライトハウス職員の林田家攀登(はんと)=同・林田茂=さんの「親子酒」がある。
公演は午前11時半から西宮市高松町の同市市民交流センターで。無料。午後2時からは我楽多の会の定期公演がある。奥薗さんTEL090・6057・1470
本番に向け、風流亭半丸さん(手前)の稽古を受ける半丸亭寿近さん。左はエクセル亭さく作さん=西宮市高松町
【全盲の落語家桂福点さん(47)=川西市出身=の話】落語を演じる上で、視覚障害のハンディは大きいが、いったん高座に上がれば、言い訳はできない。お客さんの顔が見えず、不安になることもあるだろうけれど、ネタに忠実に、「笑っていただく」という気持ちで臨んでほしい。
2015/11/13 神戸新聞