クリスマスを控え、従業員9人全員が障害者という田原市赤羽根町の段ボール加工会社「イノウエファクトリー」では、段ボール製のクリスマスツリーづくりに追われている。
同社は、20~60代の知的や精神、体に重い障害がある人たちが、自動車部品などの輸出用梱包(こんぽう)資材の加工を手掛けている。
2年ほど前、保育園に通う子どもを持つ知人から「家庭で簡単に組み立てたり、色を塗ったりできるツリーがほしい」と相談を受けた。
障害者のやりがいにもつながると考えた社長の井上敦詞さん(39)は、強化段ボールの加工技術を生かして製造に乗り出した。「障害者が能力を発揮し、誇りを持って社会に送り出せる自社製品がほしかった」
障害者が、段ボールからツリーのパーツを一つひとつ丁寧に抜き取り、袋詰めをして出荷する。
今年は10月下旬から注文が入りはじめ、12月24日のクリスマスイブまで注文を受け付ける。新たに開発した卓上サイズの高さ30センチから、店舗などに飾る2・6メートルまで。家庭用に適している1・4メートルのツリーが一番の売れ筋という。価格は1千~1万2千円。色は茶色のほか、黒や白もある。枝の部分の模様も要望に応じて変えられるという。
障害者は、それぞれの能力に合わせて作業を分担。2年前から同社で働いている中西直弥さん(24)は「段ボールからパーツを抜くときに折れないように気をつけています。施設などで飾ってもらえるとうれしい」と話す。
段ボールのツリーは軽いうえ、組み立ても簡単で収納の場所も取らないのが特徴。田原市や豊橋市の図書館、福祉施設、保育園など20カ所以上にツリーを寄付し、展示してもらっている。
井上社長の妻で取締役の幸子さん(45)は「製品づくりを通して障害者への理解を深めてほしい。生き生きと働きながら自立しようと頑張っていることを知ってもらいたい」と話す。
同社では、ツリーのほか、災害時に使う組み立て式の簡易トイレの製造や段ボールの家具づくりなどに力を入れている。
問い合わせは、イノウエファクトリークリスマスツリー事業部(0531・45・2350)へ。
段ボール製のクリスマスツリー
2015年11月28日 朝日新聞デジタル