北陸農政局が、都市農村交流などに取り組む優良団体を選定した事例集「ディスカバー農山漁村の宝」に、福井県から「NPO法人・ピアファーム」(あわら市)など7団体が取り上げられた。いずれも里山文化や地域資源を生かしたプロジェクトで、農業を通して地域再生を図る意欲的な県民の姿が紹介されている。
同局が、強い農林水産業や美しく活力ある農山漁村を実現するため、地域活性化や所得向上に努める団体を全国に発信するのが狙い。「農山漁村の宝」を「むらのたから」と読ませてキャッチフレーズにしている。管内の福井、新潟、富山、石川各県から応募のあった107団体から23団体を選んだ。
ピアファームは、障害者の就業の場として坂井北部丘陵地でナシやブドウなどの栽培を行い、新たな農業の担い手を育成。耕作放棄地約2ヘクタールの再生により経営規模を拡大したほか、農産物直売所も運営している。「あばん亭」(小浜市)は、空き家となった築100年の古民家を活用して宅配弁当の製造・販売をはじめ、なまぐさ汁や、のっぺい汁など伝承料理の継承にも努めている。
宿泊可能な体験交流施設として再生した古民家を拠点に活動する「小原ECOプロジェクト」(勝山市)は、山菜採りや炭焼き、かんじきトレッキングなど1年を通してエコツアーを実施している。地域で古くから使われてきたエゴマを栽培・搾油し、ドレッシングなどの商品として提供する「のむき風の郷(さと)」(同)にも注目。小原ECOプロジェクトには福井工大の学生、のむき風の郷には福井大のボランティアサークルが関わるなど、若い力の後押しも心強い。
また、昨年9月に農林水産省が選んだ27団体には、福井県から農家レストランで伝統料理を提供する「殿下の里づくり組合かじかの里山殿下部会」(福井市)と、農業の次世代リーダーを育成する「かみなか農楽舎」(若狭町)の2団体が入った。かみなか農楽舎の研修生は2年間、水稲や野菜の栽培技術を身につけるほか、地元の行事にも積極的に参加するなど、地域社会の一員として溶け込んでいる。卒業生の中には地元に残り農業を続ける人も多く、その農地集積は町内農地の1割以上を占め、町の農業の担い手として役割を果たしている。
これらの取り組みは同局のホームページで見ることができる。コシヒカリの古里や、越前がに、若狭ふぐなど海の幸に恵まれた福井を全国に発信するのはもちろん大事だが、まず県民が地元の豊かな農林漁業を知ることが必要ではないだろうか。地域で守り育てる農林漁業でありたい。
2016年5月14日 福井新聞