西日本鉄道(福岡市)が市内で運行する路線バスの停留所で、車外スピーカーを通じて行き先を告げる「音声案内」をやめる場所が増えている。「アナウンスの声がうるさい」と訴える地元住民の声に配慮してのことだが、その一方では、視覚障害のある利用客から「行き先が分からず乗り違えた」といった苦情が相次いでおり、同社は対応に苦慮している。
同社によると、音声案内は、バスが停留所に着くと、乗降口付近にある外部スピーカーから、運転手の肉声や録音テープによる行き先案内のアナウンスが流れる仕組み。10年ほど前から「アナウンスの音が耳障り」「早朝や夜、うるさくて眠れない」などと案内の中止を求める声が地元住民から相次ぐようになった。
このため同社は、案内を中止する停留所を順次拡大。これまで市内約2千カ所のうち、住宅地などを中心に230カ所で取りやめた。ところがそれに伴い今度は、音声案内に頼っていた視覚障害者から「行き先の違うバスに乗った」「迷っている間に乗り遅れた」といった苦情が増え始め、ここ数年は年10件前後に達するという。
改善策を検討した同社は昨年6月から(1)音声案内を中止している停留所でも(視覚障害者が使う)白杖(はくじょう)を持つか、盲導犬を連れている人がいれば音声案内を流す(2)各停留所にステッカーを張り、困っている障害者への援助を一般利用客に求める-などを実施している。
それでも、運転手が障害者に気づかず案内をしなかったり、音量が小さ過ぎて聞き取れなかったりするケースがあり、視覚障害者の不満は解消されていない。自宅から数キロ離れたスポーツ施設までバスを乗り継ぐ福岡市中央区の男性(75)は「音声だけが頼り。案内がないと、車体に近づいて運転手に行き先を確認しなければならず事故の危険もある」と訴える。
西鉄の自動車事業本部は「なかなかよい解決法が見つからず、難しい問題。バス停近くの住民の理解を求め、迷惑にならない音量での音声案内を徹底していくしかない」としている。
福岡県などの中途失明者でつくる「福岡つくし会」の南里英治相談役(69)は指摘する。「こうした問題は福岡市に限らず起きているはず。どちらの言い分が正しいということではなく、双方が納得できる方法を話し合う必要があるだろう」
=2011/05/29付 西日本新聞夕刊=
同社によると、音声案内は、バスが停留所に着くと、乗降口付近にある外部スピーカーから、運転手の肉声や録音テープによる行き先案内のアナウンスが流れる仕組み。10年ほど前から「アナウンスの音が耳障り」「早朝や夜、うるさくて眠れない」などと案内の中止を求める声が地元住民から相次ぐようになった。
このため同社は、案内を中止する停留所を順次拡大。これまで市内約2千カ所のうち、住宅地などを中心に230カ所で取りやめた。ところがそれに伴い今度は、音声案内に頼っていた視覚障害者から「行き先の違うバスに乗った」「迷っている間に乗り遅れた」といった苦情が増え始め、ここ数年は年10件前後に達するという。
改善策を検討した同社は昨年6月から(1)音声案内を中止している停留所でも(視覚障害者が使う)白杖(はくじょう)を持つか、盲導犬を連れている人がいれば音声案内を流す(2)各停留所にステッカーを張り、困っている障害者への援助を一般利用客に求める-などを実施している。
それでも、運転手が障害者に気づかず案内をしなかったり、音量が小さ過ぎて聞き取れなかったりするケースがあり、視覚障害者の不満は解消されていない。自宅から数キロ離れたスポーツ施設までバスを乗り継ぐ福岡市中央区の男性(75)は「音声だけが頼り。案内がないと、車体に近づいて運転手に行き先を確認しなければならず事故の危険もある」と訴える。
西鉄の自動車事業本部は「なかなかよい解決法が見つからず、難しい問題。バス停近くの住民の理解を求め、迷惑にならない音量での音声案内を徹底していくしかない」としている。
福岡県などの中途失明者でつくる「福岡つくし会」の南里英治相談役(69)は指摘する。「こうした問題は福岡市に限らず起きているはず。どちらの言い分が正しいということではなく、双方が納得できる方法を話し合う必要があるだろう」
=2011/05/29付 西日本新聞夕刊=