僧帽弁後尖側に弁輪部膿瘍を形成した感染性心内膜炎の手術は非常に困難な手術の一つです。膿瘍腔を心膜ストリップなどで閉鎖して、それを仮想の弁輪として糸かけをして人工弁を縫着するのが一般的と思いますが、この膿瘍腔の閉鎖が不十分であったり、心膜での補強が不十分であると、その外側にむかって組織が崩壊して、術後に左室仮性瘤を形成することがあります。
仮性瘤の外側には丈夫な心膜があり、術後に強固に癒着してしまえば、心膜を突き破って破裂することはないので、急性期を乗り切って感染が制御されれば、仮性瘤が残存しても、安定した状態をキープできることもあります。筆者の経験した症例でも大きな左室仮性瘤を形成したまま10年以上安定して経過観察している若年の症例もあります。仮性瘤の修復手術を検討したこともありましたが、特に今、何も悪さをしていないし今後破裂する可能性もないため、定期的な瘤のサイズ観察をし、外来でワーファリン管理のみ行っています。この症例は、初回手術時に左室後壁がぜい弱で、しかも膨隆しているように見えたため、念のためタコシールを2枚貼付して手術を終えた症例でしたが、術後の仮性瘤を形成してこのタコシールによって破裂が予防されたまま固定化したと考えられます。
また、今回の筆者が座長をした感染性心内膜炎のセッションでは、同様の僧帽弁後尖側の弁輪部膿瘍に対して膿瘍腔閉鎖ののち、人工弁置換を行い、術後に左室仮性瘤を形成した症例に対して、再手術を行い、人工弁を外して左室の内側から牛心膜パッチで瘤の入り口を閉鎖して治癒せしめた症例報告がありました。非常に難易度の高い手術で、素晴らしい成績だと感心しましたが、フロアからは、外側からアプローチして、瘤を切除、閉鎖することも可能である、というご意見も頂きました。外側からアプローチした方が視野が悪くて難易度の高い手術ではないか、と思います。
また僧帽弁後尖側の弁輪部膿瘍の近くには、左冠動脈の回旋枝があり、この周辺から糸かけをして冠動脈閉鎖からLOSに陥った症例を他の術者の症例でみたことがありますので、回旋枝の存在を忘れることなく手術手技を行うことが肝要と思われます。
仮性瘤の外側には丈夫な心膜があり、術後に強固に癒着してしまえば、心膜を突き破って破裂することはないので、急性期を乗り切って感染が制御されれば、仮性瘤が残存しても、安定した状態をキープできることもあります。筆者の経験した症例でも大きな左室仮性瘤を形成したまま10年以上安定して経過観察している若年の症例もあります。仮性瘤の修復手術を検討したこともありましたが、特に今、何も悪さをしていないし今後破裂する可能性もないため、定期的な瘤のサイズ観察をし、外来でワーファリン管理のみ行っています。この症例は、初回手術時に左室後壁がぜい弱で、しかも膨隆しているように見えたため、念のためタコシールを2枚貼付して手術を終えた症例でしたが、術後の仮性瘤を形成してこのタコシールによって破裂が予防されたまま固定化したと考えられます。
また、今回の筆者が座長をした感染性心内膜炎のセッションでは、同様の僧帽弁後尖側の弁輪部膿瘍に対して膿瘍腔閉鎖ののち、人工弁置換を行い、術後に左室仮性瘤を形成した症例に対して、再手術を行い、人工弁を外して左室の内側から牛心膜パッチで瘤の入り口を閉鎖して治癒せしめた症例報告がありました。非常に難易度の高い手術で、素晴らしい成績だと感心しましたが、フロアからは、外側からアプローチして、瘤を切除、閉鎖することも可能である、というご意見も頂きました。外側からアプローチした方が視野が悪くて難易度の高い手術ではないか、と思います。
また僧帽弁後尖側の弁輪部膿瘍の近くには、左冠動脈の回旋枝があり、この周辺から糸かけをして冠動脈閉鎖からLOSに陥った症例を他の術者の症例でみたことがありますので、回旋枝の存在を忘れることなく手術手技を行うことが肝要と思われます。