はぶて虫のささやき

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(旧:はぶて日記)

映画評1112 ~ 駒田蒸留所へようこそ

2023-11-15 | 映画評
今回は「駒田蒸留所へようこそ」です。

世界からも注目されるジャパニーズウイスキーを題材に、崖っぷち蒸留所を再興させるべく奮闘する女性社長と新米編集者が、家族の絆をつなぐ幻のウイスキーの復活を目指す姿を描いた長編アニメーション。
琉生役で早見沙織、光太郎役で小野賢章、蒸留所の広報担当で琉生の幼なじみ・河端朋子役で内田真礼、ニュースサイトの編集長・安元広志役で細谷佳正が声の出演。「花咲くいろは」「SHIROBAKO」のP.A.WORKSがアニメーション制作を手がけた。


<ストーリー>
亡き父の跡を継ぎ、家業である「駒田蒸留所」の社長に就任した駒田琉生。経営難に陥った蒸留所の立て直しを図る彼女は、災害の影響で製造できなくなった幻のウイスキー「KOMA」の復活を実現させるべく奮闘する日々を送っていた。そんなある日、自分が本当にやりたいことを見つけられず転職を繰り返してきたニュースサイトの記者・高橋光太郎が、駒田蒸留所を取材に訪れる。


いい話である。
いや、いい話すぎる、と言うべきだろうか。

とにかく、登場する人物が、実は敵対していると思われていた人も含めてすべて善人で、何度か訪れる苦難も、結局のところ何だかんだで克服して、最後はハッピーエンド。

それはそれでいいとしても、展開が早すぎる。

例えて言えば、ヒュー・ジャックマン主演の「グレーテスト・ショーマン」みたいな感じ?

念のために、どういう映画だったか説明すると、「貧乏人の男が、金持ちの娘をあっという間に妻にし、こつこつ働くのかと思いきや、いきなり興業デビューして一気に大成功する。しかし、共演歌手との確執から不倫騒動が起きてすぐに没落するが、すぐに立て直す。ところがケンカによる放火ですべてを失う。しかし、これまたすぐに立て直し、この間妻には逃げられるが、これまたすぐによりを取り戻す、そして最後は大成功!」という話だ。

つまり、いろいろと艱難辛苦が訪れるのだが、たいした苦労をしている様子もないのに、すぐに復活する。
この間の展開があっという間なので、見ている方は唖然とするばかり。

「This Is Me」を始めとした歌が良すぎたので感動したのだが、歌がなければただのクソ映画だ。

これに似たような展開なわけである。

ウイスキー造りをしていた実家が、震災によって廃業を余儀なくさせられそうになるが、後を継いだ娘が立て直しを図り、すぐにヒット作「若葉」を作る。そして、以前作っていた銘酒「独楽」を復活させる寸前まできたが、ここでまた火災により壊滅的な被害を受ける。しかし、従業員や絶縁したはずの主人公の兄などの協力もあり、すぐに復活する・・・という話だ。

この間わずか数年。

ウイスキー作りがどれだけ大変なのかはわからないが、ちょっと短期間すぎるという気はする。

とは言え、「いい話」なので、このあたりを気にしていたのでは、映画なんて見ていられない。

ただし、途中でどうにも納得いかない場面があった。

主人公・駒田琉生に取材をする役目を言いつけられたニュースサイトの記者である青年・高橋光太郎が、琉生に対してトンデモない暴言を吐いたシーンだ。

蒸留所内での朝礼の場で、琉生に向かって「アンタはいいよな。進む道が決まっていて、やりたいことをやってりゃいいんだから」みたいなことを言うのである。

まず、光太郎は、まだ25歳なのにすでに職を転々としていて、このニュースサイトの会社が5社目ということになっている。

要するに、何事も続かない男なわけであるが、その理由がこういう暴言をすぐに吐くから、というのであれば、それもあり得ないことではない。

しかし、だとすれば、その後すぐに琉生に謝った上に、以降駒田蒸留所にために尽力するようになる、という展開にはゼッタイにならないと思う。

つまり、光太郎は単に仕事に対して「やりがい」を見つけられないだけで、今回取材を通じて蒸留所の苦労を知り、それを応援することが自分の「やりがい」になった、というのが、この映画の流れだと思うのだが、だとしたら、こんな信じられない暴言はゼッタイに吐かないはずだ。

実は、琉生は酒のことなどに興味はなく、絵を描くことが大好きで、そのために美大に進学したのだが、実家が大変であることを知って、何とかしたいと大学を中退してまでして立て直しに尽力するわけである。

つまり、琉生にはそういう事情があるんだよ、ということを知らしめるための演出なんだろうが、そのことを知らない光太郎に、こんな暴言を吐かせることで状況を説明するのは、いくら何でもあり得ないと思う。

琉生の事情を光太郎に知らしめたいのであれば、光太郎が蒸留所の関係者がいないところで、上司である安元に言えばいいだけ。

「あの娘って、いいご身分ですよね、だって・・・」と言った光太郎に対して、安元が「ホントにお前は何にも知らないんだな。彼女はやりたいことを断念してまで、酒造りに専念しようと頑張っているんだよ」と言えば、その二人だけの会話になり、琉生を追い詰めるような展開にはならないはずだ。

とにかく、あの暴言が吐かれた時には、さすがに私もビックリした。

あまりに場違いな発言だったからだ。

本人だけでなく、他に従業員も全員いたのだから、そのような場でこんな発言をするようなヤツがいたら、私ならこいつに殴りかかる。

もちろん、光太郎の人物設定に問題があるのではなく、突如こんなセリフを吐かせた制作者陣の頭がおかしいと思う。

ということで、全体としては「いい話」なので、割と楽しめたのだけど、このアホみたいな演出だけはどうにも納得がいかないので、物語としての評価は「B」で、この部分だけは「D」なので、間を取って「C」にしておきます。

いや、それにしても、よくこんな脚本にしたなあ、と思います。

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