映画評1228 ～ 風林火山（ＣＳ）

今回は「風林火山（ＣＳ）」です。

井上靖の同名原作を、「日本のいちばん長い日」の橋本忍と、「大奥(秘)物語」の国弘威雄が共同で脚色にあたり、「佐々木小次郎(1967)」の稲垣浩が監督した大型時代劇。撮影は「連合艦隊司令長官　山本五十六」の山田一夫が担当。

主演：（山本勘助）三船敏郎
共演：（由布姫）佐久間良子、（於琴姫）大空真弓、（武田晴信）中村錦之介、（武田勝頼）中村勘三郎、
（板垣信方）中村翫右衛門、（板垣信里）中村嘉葎雄、（武田信繁）田村正和、（飯高虎信）志村喬、（横田備中）清水将夫、（甘利備前守）山崎竜之助、（内藤修理）中谷一郎、（小山田備中）土屋嘉男、（馬場美濃守）久保明、（秋山伯耆守）瑳川哲朗、（山県三郎兵衛）堺左千夫、（荻原弥右衛門）中村梅之助、（畑中武平）緒形拳、（三条氏）久我美子、（諏訪頼茂）平田昭彦、（諏訪岩根）市原悦子、（笠原清重）月形龍之介、（村上義清）戸上城太郎、（上杉謙信）石原裕次郎など

＜ストーリー＞
兵法に秀でながら、いまだ決めた主君にめぐり合えず年を重ねている山本勘助は、甲斐の武田家へ目をつけ、板垣信方に取り入り若き当主・武田晴信とのお目見えを許される。武田家家臣は、流れ者勘助の才を評価しようとしなかったが、晴信は板垣の推挙なら、と召抱える。勘助にとっては仕官してのちの初陣となる諏訪攻めでは、諜略を働きかけて国主・諏訪頼茂を謀殺する。しかし、その姫・由布姫に心を奪われた勘助は、その気持ちを秘めたまま日々を過ごす。晴信は次に信濃攻略に乗り出すが、勘助の理解者であった板垣をはじめ、勘助を快く思わず命までも狙った甘利らが戦死する。武田勢は手痛い犠牲を払った。そうした長期化する戦況のなか、信濃の諸侯は越後を頼って落ち延びる。その越後には関東管領・上杉家の名跡を継承した長尾景虎改め上杉謙信がいた。武田か。上杉か。川中島を主戦場とする戦国一の血戦が近づこうとしていた。


１９６９年の作品だから、もう５５年も前のものだ。

とは言え、映像・描写はしっかりしていて、合戦のシーンでも中途半端なＣＧや合成などを駆使していないので、迫力には欠けるものの、違和感がほとんどない。

主役が三船敏郎演じる山本勘助であるせいか、本来であれば主人公であってもおかしくはない中村錦之介演じる武田信玄（晴信）は、ちょっと美形すぎるというか、貫録には欠ける感じがした。

ただ前半は、勘助の権謀術数（汚い部分？）が中心なので、謀略で諏訪頼茂を殺害したり、頼茂の娘である由布姫に信玄の子を産ませて（後の勝頼）跡取りにさせたりするなど、見ていてあまり気持ちのいいものではない。

しかし、後半になって上杉謙信との領地争いが描かれるようになると、一気に盛り上がる・・・ものと思っていたのだけど、如何せん勘助が主役だから、結末は見えている。

川中島の戦いも、もっとも激戦になったと言われている第４次が中心ではあるものの、それまでの３戦は描かれておらず、しかもあの勘助が取った作戦も「キツツキの計」とは呼んでいないので、知らない人にはわからないと思う。

さらに、信玄と謙信にとっての最大のエピソードとも言える、謙信による信玄への単騎斬り込み（一騎打ち？）は、作者の井上靖か監督がこれを史実だと思っていないのか、謙信と同じ格好をした騎馬武者が７～８人で信玄のいる本陣に突入するという形を取っているので、やや迫力に欠ける。

つまり、本来信玄の得意技だったと思われている影武者を使っているわけだ。

ついでに言うと、謙信を演じていたのは若き石原裕次郎だけど、劇中では一切セリフがない。

三船敏郎と石原裕次郎に共通するのは、そのものすごい存在感であるが、二人とも実はセリフ回しはあまりうまくない。

特に石原裕次郎の方は、はっきり言って下手だと思う。

そのあたりを考慮しているのか、まったく一言もしゃべらなかったのだが、ずっと無表情のままでいればいいのに、最後に信玄を見てニヤっとするシーンがある。

これははっきり言って蛇足だったと思う。

その他、緒形拳が信玄の槍持ちという小姓役であったり、田村正和が武田信繁を演じていたけど、普通に（？）しゃべっていたりして驚いた。

などなど、５０年以上前の作品なのに、まったく色褪せていなかったものの、今いち迫力には欠けたので、名作に対する敬意という意味で、評価は「Ｂ」にします。