
ニャロメに吾ら夫婦は弄ばれている。
窓の向うに椅子が置いていて、その椅子に座れば我々夫婦の視線の中に入ることを知ってか知らずにか、ニャロメは色々の姿態を見せつける。
こちらを、窓ごしに覗き込んで大欠伸をしたり、「ニャーニャー」と声をかけたり、香箱座りでさも幸せそうな表情を見せる。

時には全身をナメナメして、あられもない恥ずかしいポーズをする。
夫婦の会話は 姫ちゃんのことに及ぶが、なにせ亡くなってしまった姫ちゃんの部が悪い。
偲びつつも、ニャロメに心を奪われてしまう。
夜中に目が覚めた。
今日はその時に裁つたブラウスを縫う。Tシャツ代わりに何枚あっても重宝をするから、最近縫ったパッチワークの服と同じ型紙で涼しい麻木綿をしつけまで真夜中にこぎつけてやった。
梅雨の闇?
近くを走る高速道路の音も全くせず、静かな闇に起きているのは自分だけだと却って心が勇む。天邪鬼だ。
🍒 山の気の身にしみにけり河鹿笛
🍒 河鹿笛瀬音にのりて来たりけり
🍒 産土の気よ山の気よ河鹿鳴く
v🍒 瀬の音の涼し母御と湯の宿に
v🍒 青楓に塩を載せるたる夏料理
🍒 夏料理下戸の母干す食前酒
🍒 塩加減三本の指鮎を焼く
🍒 ありありと老鶯楽しむ母のゐし
🍒 盛り上がる蹲に映ゆ緑かな
🍒 寝静ずまる湯の宿火蛾の羽音とも
🍒 露天湯や昏れ残りある山法師
俳句は夜中に限る。
母と行った記憶の河鹿宿が甦りすらすらと句が生まれた。
母さんのおかげだ。
良し悪しは別として母さん夢でいいから出てきてよ。