料理の匂いには派手な匂いと地味な匂いとがある。
カレーライスは派手な匂い。
目玉焼きは地味な匂い。
地味で目立たないが実力者の匂い
目玉焼きっていい匂いだな、と思いつつそのことに気づかないでいた。
目玉焼きはその形が魅力的で、そっちにばかり目がいって匂いのほうには関心が向かなかったのかもしれない。
焼きあがった時の理想の形は、真ん丸の白身の中央に真ん丸の黄身。
日の丸の旗の四角を丸にし、真ん中の赤丸を黄丸にしたやつ。
だが焼きあがった目玉焼きは、どこの国の国旗にも似ていない。
周辺グジャグジャ、真ん中の黄身よろよろ。
ま、こんなもんだろね。
なーんにも考えないで卵を割り、なーんにも考えないでフライパンに落とす。
落としてから慌てる。
このあとどうするんだっけ。
という風にちょっとだけ戸惑い、何の方針もなく卵をフライパンに落としただけ。
不細工ながら皿の上で湯気を上げてる目玉焼き。
目玉焼きと向かい合う。
つくづく見る。
しみじみ思うことは、あれこれ面倒見たな、という思いと、苦労を共にしたな、という思いが目玉焼きを美味しくさせる。