所謂、韓国映画には外れがない。
それは数多ある中から、選りすぐりの作品が来日しているからだろう。まあ、それは他国の映画でも言えることだろうけれど。
韓国映画と言えば、キレッキレッのアクションや、暴力描写が容赦ない陰惨なサスペンスや、ベタなラブロマンス、と言う印象。
そして、ときどきヒューマンドラマで泣かせてくれる。
本作は後味が爽やかなヒューマンドラマの趣き。
舞台は富裕層の子弟が通うソウルの名門私立高校。この学校には貧困層にも高度な教育の機会を、と言う名目で「特別入学枠」が設けられている。
主人公のシン・ジウ(キム・ドンフィ)は、その特別枠で入学した生徒の1人だ。母子家庭で経済的余裕のないジウは、他の生徒にとっては当たり前の週末の通塾も無理だ(基本的に全寮制?)。
地元の中学校ではトップの成績だったジウも、この学校では特に数学の成績が不振で、担任教師からは公立高校への転校を勧められている。
そんなジウがある出来事をきっかけに、学校の夜間警備員を勤めるイ・ハクソン(チェ・ミンシク)から、密かに数学の個人教授を受けることになる。
ハクソンは脱北者で、学校の生徒たちからは「人民軍」と呼ばれていた。
名門校の生徒たちは皆、名門大学への入学を目指し、夜間には校内の自習室で遅くまで勉強する日々。担任教師は入試突破の為のノウハウ伝授に余念がない。
日々の勉強は大学入試突破の手段と捉え、試験の結果にばかり目を向ける生徒たちにハクソンは否定的で、ジウに「数学は正解を出すより、答えを導く過程が大切だ」と説く。
そして、彼が愛して止まない「数学」の美しさを、ある時は誰もが知る数学の「公式」で、またある時は意外な「音楽」で、ジウに熱く語るハクソン。
彼は一体、何者なのか…
毎年秋頃に、韓国の大学入試のてんやわんやが日本でもニュースになる。日本以上に学歴社会の韓国では、受験戦争も苛烈だと言う。
息子が通った私立の中高一貫校は、台湾や韓国の私立校とも交流があり、校長曰く、韓国では「3当4落」と言う言い回しがあり、それは睡眠時間が3時間なら大学入試は突破出来るが、4時間ではダメなことを意味するそうだ。
そして、その学校には自習室があり、そこで生徒が夜間に自習するのが当たり前だと。
最近は「疲れが取れて勉強に集中出来る」と唆して、塾に通う生徒に何者かが薬物を売りつける事件(麻薬のように最初はタダでくれて、後で生徒とその親を脅迫)も発生し、社会問題に発展した。
そうした韓国の過熱した受験競争に本作は明確なアンチテーゼを示している。
本作は「そもそも学問とは何なのか」「学ぶことの意義とは何なのか」を、ジウとハクソンの「子弟愛」(擬似父子愛?)を通して、見る者に問うている。
そして、目の前の難題(←学問に限らず)に怯む事なく、果敢に挑戦し続ける「勇気」の大切さを説く。
斯くて、本作は大学で数学を専攻した夫の胸にも、いつになく刺さる台詞が多かったらしい。
さらに劇中で繰り返し流れるバッハの調べも、本作を格調高く盛り上げてくれた。チェロの響きがなんとも心地良いのだ。
中高生、受験生、新社会人と言った若い世代はもちろん、ある程度歳を重ねた大人にもオススメの佳作👍。
ふたつの人生の交錯が引き起こす、思いもよらぬ化学反応。「出会い」が、その後の人生を変えることもある。
人生、捨てたもんじゃないです。
(了)
いつまで生きるかよりどう生きるか、、
過程に意味があるように思います。
仰る通り、結果より過程を重んじるのは人生に通じるのでしょうね。
劇中では数学に苦手意識を持つジウにハクソンが、「勇気が大事なんだ。頭の良い奴は解けなければ直ぐに諦めるが、諦めずに明日も頑張ろうと思えることが勇気で、大事なんだ。だからお前も勇気を持て」と励ますんです。
それ、まんま人生だよなあと、見ながら思いました。一見くたびれたおじさんが、自信喪失の若者に直球で正論をぶつけて来るのが気持ち良かったです。
現実の世界でそんなことを言ってくれる人との出会いはなかなかないだろうから。
だから、この映画を若い人に是非見て欲しいなと思います。
自信がなく不安な時ほど、誰かに力強く励まして貰いたいですよね。
田舎も都会も受験戦争は同じ
でも
睡眠時間が3時間なら大学入試は突破出来るが、4時間ではダメって有り得ねぇ~(・・;)
ニュースでは遅刻しそうな子をパトカーが試験会場まで送り届けたり、試験会場の門の辺りに高校の後輩や塾講師等が大勢で応援合戦を繰り広げる様子がレポートされていて、何事にも熱くなる韓国の国民性を感じます。
日本以上に大企業とそれ以外の格差が激しく、就職でも競争が激しいから、名門大学を必死になって目指す韓国の学生たち。
以前、米国人の旦那さんの仕事の関係で一時期日本に住んでいた韓国人女性と、共に美大卒と言う縁で友達になったのですが、彼女もそんな激烈な競争社会から逃げ出したくて、米国の大学に進学し、その後、韓国時代に英語の家庭教師だった男性と結婚したらしいんですよね。
TOEICも満点近いスコアを取らないとサムスンのような大企業には入社が難しいそうなのですが、入社しても早ければ40代頃にはお払い箱になるそうで、そう言う人が退職後に始めるのがフライドチキンの店なんだとか。
息子の友人がサムスンとの取り引きで、コロナ前は毎月のように韓国に行っていたらしいのですが、向こうの社員は日本語で対応してくれたんだそうです。こちらが商品を買って貰う側なのに。向こうの社員の優秀さには負けるなあと言ってました。それでも一生安泰と言うわけではないし、支給される老齢年金額が少な過ぎて暮らして行けないとか…
そんな激烈な競争社会に嫌気して、米国に移住する人が多いのでしょうね。少子化も日本以上に進んでしまっている。。
なんだかんだ、まだ日本は住み易いのでしょう。でも、将来的には日本もどうなるか分からないですね😅。