はなこのアンテナ@無知の知

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ソチOP女子フィギュア・スケートの感想

2014年02月20日 | はなこのMEMO
日本人は謙虚さを美徳と思っている限り、オリンピックのような「4年に1度しか開催されず」「国民の期待を一身に背負わされるような」(←そう、その注目度の高さにおいては、毎年開催される競技ごとの世界選手権など比ではない)特異なスポーツ・イベントでは、勝てないんだろうな。どんなに実力があっても、プレシャーに押し潰されて本番でその力を出し切れない。

それが証拠に、今回十代にして銀・銅メダルを獲得したスノーボードの選手は、日本人的な感覚からすれば、「これで、僕の名前が歴史に残る」とか、その発言からして生意気だった(笑)。

しかし、そのふてぶてしさこそ、攻めの気持ちで試合に臨むメンタルの強さだったのだろう。肝が座っているからこそ、大舞台でもプレッシャーすら自らの力に変えて、競技を心から楽しんでいるように見える。

今日の、コストナー選手やソトニコワ選手も正に、そんなアスリートだった。コストナー選手の演技は、スケーティングする喜びに溢れたもので、見る側にもそれが十二分に伝わった。ほぼ完璧に滑り終えた彼女の表情は感極まった様子で幸福感に満ち溢れていた。これから演技に向かわんとするソトニコワ選手は、自らに発破をかけるように気合い十分な様子で、全身から力強さが漲っていた。「さあ、私のこの完璧な演技を見て!」と言わんばかりの迫力で見る者を釘付けにした。

それに対して、日本の三選手は演技前に皆一様に顔が緊張で強ばっており、浅田選手など6分間練習の間、心ここにあらずという様子で、天井ばかりを見つめていた。その表情には悲壮感すら漂い、平常心ではなかったように思う。そして演技では信じがたいミスの連続。

どうやら演技をする以前に、勝負は決まっていたようだ。


日本人は歴史的に、大陸諸国のように常に国境線の攻防に明け暮れることもなかった島国育ちなせいか、一般的に他者に対して優しく、謙虚で、礼儀正しい。そんな穏やかな気質が、競い合う場ではどうも裏目に出てしまうようだ。良きにつけ悪しきにつけ井の中の蛙である日本人は、大海の容赦ない荒波に飲まれてしまうのだろう。

日本人としての良さを保ちつつ、世界と戦って行くにはどうしたら良いのか?これは何もスポーツの世界に限った話ではなく、弥が上にも様々な分野でグローバル化の荒波に晒される今、私達は生き残る為に知恵を絞らなくてはなるまい。


ソチOPは時差の関係で、日本時間の深夜に競技が行われることが多いので、体調管理の為にも録画映像を見るよう心がけていたが、ついつい女子の試合を(あれほど前回のバンクーバーOPで懲りたのに)夜更かしして、リアルタイムで見てしまった。そして、心配していたことが現実となってしまった(ショックで、また風邪がぶり返しそう…horori)

上位陣がほぼノーミスでハイレベルな戦いを繰り広げている以上、日本人選手のメダル獲得はほぼ絶望的になったが、個人的にはメダル獲得云々よりも、選手達が自らの力を出し切れなかったことに、とてもがっかりしている。このままSPの結果を引き摺って、FPでも実力を発揮できないのでは、選手も悔いが残るに違いない。外国勢が本番に俄然強いのを見ると、メンタル管理術で、日本はかなり遅れているのかなと思う。内弁慶な国民性だからなおのこと、メンタル面の強化が組織的に徹底して行われるべきなのだろう。

特に金メダル候補と言われながら、SPで16位に沈んだ浅田選手は気持ちを立て直すことが大変だとは思うが、せめてFPではメダルの呪縛から解放されて、かねてから彼女自身が公言していたように、「自らの競技人生の集大成としての演技」に集中して欲しい。失敗を恐れず、伸び伸びとした演技で、愚直なまでに常にチャレンジャーで在り続けたその勇姿を私達の目に焼き付け、競技者としての最後を是非、笑顔で締めくくって欲しいと願うばかりだ。

そうでなければ、次のステップに自信を持って進むことができないだろうから。彼女の人生は、これからの方がずっと長いのだ。

【追記】

日中は所要で出かけなければならなかったので、記事が言葉足らずになってしまったので、ここで改めて追記したい。

上記にて、SP首位のキム・ヨナ選手についての言及がなかったが、それは彼女のそつのない演技に、「強心臓の持ち主だな」「一線から久しく遠ざかったのに、よくOPの大舞台でここまで確実な演技できるものだ」と感心はしつつも、コストナー選手やソトニコワ選手の演技ほど胸に迫るものがなく、見終わって暫くすると忘れてしまうほど印象が薄かったからだ。他でも言われているが、彼女の演技はここ何年も、どのプログラムでも殆ど変わり映えせず、技術的な進歩が感じられないし、魂を揺さぶられるような感動もない。あの演技で、濃密で見応えのあるコストナー選手やソトニコワ選手の演技より高得点が出たのが解せない。

さらに女子に関して残念で仕方がないのは、多くの選手が高難度の3Aに果敢に挑戦し続ける浅田選手を尊敬すると言いながら、その追従者がこれまでにひとりも出なかったことだ。皆、3Aのような高難度の技に挑むよりも、試合に勝利することを優先した(まあ、それも戦略としては当然有りなんだけれど)。その結果、浅田選手は孤高の挑戦者で在り続けなければならなかった。

もし、若手で追従者が数人、せめてひとりでも出れば、ここまで浅田選手が彼女自身の最大の武器として3Aに執着することもなかったのではないか?女子フィギュアの開拓者としての重責をひとりで負うこともなかったのではないか?(自分の限界点に向かって、飽くなき挑戦を続けると言う点で、浅田選手は"アスリート魂の権化"のような選手だったのかもね。だから誰もが注目せずにはおれない)

せっかく男子は「羽生選手によって未来の扉が開かれた」(羽生選手は華奢で繊細そうな見かけによらず、強いメンタルの持ち主なのだろう。より良い練習環境を求め、海外に渡った大胆さやガッツも、これまでの男子選手にはなかったものかな?)と言うのに、もし、キム・ヨナ選手が今朝のような演技でよもやソチOPに優勝するようなことがあれば、女子選手は伊藤みどり選手以前の時代に逆戻りすることになるのだろう。

そう仕向けたのは、他ならぬISUである。浅田選手はISUに潰されたようなものかもしれない。もちろん、別の見方もできる。OPで選手に相応の結果(メダル)を求めるのならば、統括組織として、ISUの評価基準に則った戦略を立てて来なかった日本スケート連盟の責任は大きいのではないか?

今回どんな結果であれ、浅田選手がフィギュア史に名を残す、最高の選手のひとりであることに変わりはないと思う。トリノOPで銅メダルに終わったスルツカヤ選手が、記憶に残る素晴らしい選手であるのと同様に。
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