はなこのアンテナ@無知の知

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ドラマから見えて来る「公然の秘密」

2024年07月15日 | はなこのMEMO
昨年、amazonオリジナルドラマとして制作、世界配信されて好評を博したと言う『エンジェル フライト』。6話完結のミニシリーズだ。

遅まきながら、NHK-BSで最近、放映されたのを見た。

本作は古沢亮太脚本(他の脚本家担当回もあり)米倉涼子主演で「国際霊柩送還士」の活躍を描き、毎回、国内外で亡くなった人々の遺体を巡る重厚な人間ドラマに涙が出た。

そもそもこのドラマで「国際霊柩送還士」なる職業の存在を知った。彼らの職場は公的機関ではなく私企業だ。

海外で亡くなった邦人、国内で亡くなった外国人を納棺し、手厚く死に化粧を施して本国に送還する彼らの仕事は、その職務遂行の為に当該国の政府との折衝、国際/国内航空貨物便の手配、遺族に対する物心両面のケア、時には現地での葬儀、火葬と多岐に渡る。ドラマでは並行して彼ら個人のエピソードも描かれる。

小沢亮太の手になる脚本は、現場で迅速な判断を迫られる緊迫のシーンと折々メンバー同士が軽口を叩き合うシーンの緩急の塩梅が絶妙だ。

持病をおして渾身の演技を見せた米倉涼子にとって、本作はあの「ドクターX」に並ぶ代表作になるのではないか?シーズン2が待たれる。

さて、本作のエピソードの中に、国内の縫製工場で技能実習生として働くベトナム人女性を描いたものがあった。

私の住む町でも近年、ベトナム人の姿を多く見かけるようになった。残念ながら、彼らにあまり良いイメージはない。繁華街でグループ同士の諍いを発端とした殺人事件を起こしたり、バスの車内で同胞の女性に人目も憚らず言い寄る姿を何度となく見かけたからだ。ニュースでは北関東で発生した、実習場所からの脱走ベトナム人による農作物の窃盗事件も度々伝えられる(つい最近、航空会社で旅客からの受託荷物を窃盗した技能実習生が逮捕されたケースも)。

一方で、「実習生」とは名ばかりの、低賃金、長時間労働の「出稼ぎ労働者」としての実態も報道で目にしているので、彼らに同情もしている。

国の施策で「技能実習生」の名目で「外国人労働者」を招聘しているのならば、日本政府は出稼ぎ先までの渡航費用や職場斡旋の手数料を借金として背負わせるブローカーに斡旋事業を丸投げするのではなく、募集実態から労働実態までを適正に管理監督する責任があるのではないか?
 
国内の人手不足を海外の労働者で賄うと言うならば、その在り方を適正化しなければ、円安で出稼ぎ先として魅力を失う(母国への送金額が目減りする)一方の日本に、来てくれる外国人なんて早晩いなくなるだろう。

そんなことを改めて思い起こさせたのが、ベトナム人女性を軸に描いたエピソードの回だった。

最近は一部ブランド品でさえ、すっかりMade in Chinaが当たり前になった衣料品だが、デパートや一部通販では「日本製」を売りにする商品もある。日本製=高品質の証であった時代の名残りとも言える。

多少割高でも日本製と聞けば買ってしまう消費者心理を突いている。しかし、その実態はドラマで描かれたような、「確かに日本で製造はされているが、その作り手は外国人労働者」と言う可能性が高いのではないか?

聞いた話ではイタリアでも、中国系企業が原料を中国から安価に仕入れ、イタリアの工場で中国人出稼ぎ労働者を使って縫製した衣料品をmade in Italyとしてイタリア国内やEU域内で大々的に販売しているそうだ。私達がイタリア土産として購入したmade in Italyの衣料品も、もしかしたらそのひとつなのかもしれない。

その生産拠点のひとつがPratoと言う町だ。そこには不法滞在者も含めて約3万人の中国人が暮らしているらしい。Prato地域の人口17万人の実に2割近くを占めているのだ。当然、イタリアと中国を行き来する中国人も多く、それが欧州の中でもイタリアで最も早く新型コロナが蔓延した原因のひとつではないかと言われている。

先進国のブランド力を前面に出しつつ、低賃金の出稼ぎ労働者を使って製造コストダウンを図り利益を上げる、こうした先進国のビジネスモデルは(まあイタリアのケースはイタリアの威を借りた中国の小賢しい商売な訳ですが😅) 、実は「公然の秘密」なのではないかと思う

しかし、この手法がいつまで通用するのか?少なくとも発展著しいアジア諸国から労働力を調達するのは年々難しくなりそうだ。

(了)

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