はなこのアンテナ@無知の知

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コンビニの深夜営業を巡る問題

2019年03月09日 | はなこのMEMO
大阪府内のある大手コンビニ・フランチャイズ店オーナーの「深夜営業を止めたい」と言う訴えが波紋を呼んでいる。

空前の人出不足で、特に深夜帯のアルバイト店員が見つからない。2018年の6月から今年の2月にかけて13人もの従業員が辞め、追い打ちをかけるように長年共に店を切り盛りして来た妻を病で亡くし、オーナーはひとりで最長28時間も働く日もあるなど、心身共に疲れ果ててしまった。その窮状をコンビニ本社へ訴えたが、会社側は契約を盾に短縮営業を認めなかった。

そこでオーナーは本社の了解を得ずに独断で2月1日に午前6時から翌午前1時までの短縮営業を始めてしまったのだが、本社からは「24時間営業の不履行は契約違反なので違約金(1,700万円)が発生し、契約解除の可能性もあり得る」と指摘されたらしい(都内の大学に進学していた息子さんも父親の窮状を見かねて帰郷し<中退か休学かは不明>、現在は父親の店を手伝っていると言う)。(以上、テレビ報道や日本経済新聞2019年2月22日朝刊15面等を参考とした)

確かにフランチャイズ契約で取り決めたことは重要だけれど、何の斟酌もなしに違約金云々と言う会社の回答は、加盟店オーナーに対して冷た過ぎやしないか? (一応、オーナーの妻が亡くなった際にコンビニ本社は応援要員を派遣して対応しており、それに対してはオーナーも感謝の意を述べている。しかし、これはあくまでも一時凌ぎに過ぎず、根本的な問題解決には至っていない。本社との話し合いは膠着状態が続き、心身共に限界に達したオーナーは、今回実力行使に出たのだろう)

実は同様の問題は私の身近でも起きていて、同じマンションの住民ご夫婦も、深夜帯の営業でアルバイト店員が見つからず、60歳半ばを過ぎたご主人が連日連夜の深夜勤務で体調を崩したためコンビニ経営から身を引いたと言う。

それだけに今回の一件には高い関心を持って注視している。


そもそもコンビニは24時間開いていなければいけないのか?常に24時間開いていなければ、コンビニではないのか?(当然ながらビル等のテナント営業では、現時点でもビルの開業時間に合わせて営業している)

24時間営業に関して、コンビニの立地(地域性)やフランチャイズ店オーナーの事情を考慮する余地はないのか?全てのフランチャイズ店は一律24時間営業でなくてはならないのか?その根拠は何なのか?コンビニ各社が横並びに24時間営業である必要はあるのか?(会社として、24時間営業の看板を下ろした時点で”負け確定”なのか?そう言えば昔、「24時間闘えますか♪」と言う栄養ドリンクのCMキャッチコピーがあったなあ…)

過去にセブンイレブンが社会情勢の変化に伴い、屋号にもなった午前7時~午後11時の営業時間を24時間の終日に変更したのであれば、今また社会情勢の変化に合わせて営業時間の見直しをすることはないのか?

素人目にも疑問は尽きない。


先日の「羽鳥慎一モーニングショー」でもこの件について特集していたので、そこから得た情報を以下に列挙してみる。


まず、コンビニ店オーナーの平均勤務時間:18時間bikkuri
→時給換算すると500円にも満たないhekomi雇っているバイト店員より低いhorori

経営が安定軌道に乗るまでの創業期ならともかく、それが開業以来ずっと続いている。働き方改革が叫ばれ、職場をあげて勤務時間の適正化が図られている昨今の状況とは真逆の状況にある。

コンビニのフランチャイズ店オーナーは店舗のオーナーでありながら、フランチャイズ契約の縛りでオーナー店の営業時間も自身で決められないジレンマを抱えている。しかし、営業に損益が出れば、それはオーナー自身の責任となる。フランチャイズ店オーナーは経営者なのか?それともコンビニ本社の管理下にある労働者なのか?

コンビニのタイムスケジュール:

AM 0~4時;商品の搬入、検品、品出し①
   4~7時:清掃
   7~9時:販売ピーク①
   9~12時:搬入、検品、品出し②
   12~13時:販売ピーク②
   13~16時:棚卸、清掃、ゴミ出し
   16~18時:搬入、検品、品出し③
   18~21時:販売ピーク③
   21~0時:品出し、清掃、ゴミ出し、【発注】

日に3回ある搬入、検品、品出し作業はかなりの重労働らしい。従業員は、大量の商品の品出しを販売と並行して行わなければならない。しかも昨今のコンビニは商品の販売だけでなく、公共料金の収納や宅配の受け取り引き渡し、興行チケットの販売や発券の代行業務も行い、ホットスナックも提供するのでその調理もしなければならない。時間帯によっては息つく暇もない忙しさだろう。

さらに昨今は災害時の社会的インフラとしてもコンビニは重要視(重宝?)されている。

そして、オーナーにとって最も重要な作業が発注売れ残って廃棄処分になれば、それは全てオーナーの損失となるので、廃棄が出ないようシビアに発注を決める。

コンビニ各社が24時間営業に拘る理由:

①深夜営業を止めると、全体の売上が3割ダウンすると言う経験則を持っている(コンビニ本社曰く、24時間営業していることが顧客に「あの店はいつでも開いている」と言う安心感や信頼感を与え、昼間の集客に繋がっている。)

②深夜の輸送、搬入で物流コストを抑える。

③取引業者(弁当製造等)もコンビニの営業に合わせて24時間稼働しており、深夜営業を中止すれば、その業者への影響も大(昼勤、準夜勤、深夜勤と三交代制を取ることで設備投資を抑えられる)

深夜営業を求める客:深夜勤務者、学生等

番組が聞いた街の声(サンプル数は13人と少ないが):8割の人が、(省電力等)環境保護の為なら深夜のコンビニ利用を控えても良いと回答。

セブンイレブン・ジャパンでは99%がフランチャイズ店で、直営店はわずか1%。
→本社としては社員雇用の人件費がかかる直営店より、コンビニ営業の「看板」と「ノウハウ」の対価としてフランチャイズ店オーナーが支払うロイヤリティで儲ける方が経営効率が良いからではないか?→ロイヤリティの見直しは?→過去に一度行っている。

既にコンビニは店舗数に一部の地域で飽和感もあり、今後は人口減少、かつ社会構成員の高齢化が進む日本では、24時間営業というコンビニのビジネスモデル自体が曲がり角に来ているのではないか?


それを踏まえてのことか、セブンイレブン・ジャパンでは時短営業の実証実験を行うと言われている。当初直営店のみでの実施予定であったが、フランチャイズ店オーナーらからの申し入れもあり、フランチャイズ店での実施も検討されるようだ。

別番組では経済評論家の森永卓郎氏が「地域のコンビニ各店舗が協議して、深夜は当番営業制にしてみてはどうか?」と言う提案をしていた。実効性からすれば一考に値するアイディアだと思う。

思うに、仮に地域のコンビニが深夜は当番営業制になったとしても、今や情報化社会なのだから、スマホ等で深夜営業している店舗を探すことはできるはずだ。

コンビニの24時間営業は必要かとの問いに、街頭インタビューで寄せられた「飲み会帰りに寄りたい」だの、「ついうっかり忘れていた公共料金を支払いたい」などと言った利用者の言い分はそれほど切実な訴えとは思えず、コンビニが24時間営業をしなければならない理由としては弱い。

利用者が行き付けのコンビニをいつまでも利用したいのであれば、その便利さを心置きなく享受したいのであれば、またコンビニ各社もその事業をいつまでも継続したいのであれば、コンビニのフランチャイズ店オーナーが無理なく経営を続けていけるような体制作りを、企業と利用者双方で考えて行かなければならないと思う。

今の私達は一時が万事あまりにも”便利さ”に慣れ過ぎていて(企業は企業で利潤追求に走り過ぎていて)、それが難しくなりつつある現在の社会状況への理解や考察が足りないような気がする。

経営者側の事業拡大路線は、もはや環境保護の時代にそぐわない。また、利用者側が求める至れり尽くせりのサービスも、結果的に利用者自身を怠惰にするだけだ。

これからの時代は「与えられた環境で現状の良い部分をいかに持続させるか」が問われるようになるのではないか?その為には皆で知恵を絞らなければと思う。

【追記】

日本経済新聞2019年2月22日朝刊15面には、セブンイレブンが今夏予定している沖縄初進出についての記事が掲載されている。セブンイレブンの進出は、コンビニ大手三社の中で先頭を切って沖縄に進出したファミリーマートに遅れること30年である。

先行するファミリーマートとローソン(ファミマの10年後に進出)は沖縄独特の商慣行を踏まえ、積極的に現地の小売業者との連携策を取り、沖縄独自の商品開発も行うなどして、「ローカライズ戦略」で現地でのフランチャイズ浸透に努めて来た。

一方のセブンイレブンは『綿密な市場調査をした後オーナーを募り、店舗数が一定数に達した時点で、取引先の食品加工会社に工場建設を求める。他のコンビニと違い、専用工場がなければ進出しない。』と言う”自社と旧知の取引業者連合”の「パッケージ戦略」で進出を図るのが常らしい。沖縄でも同様の戦略を取り、現地企業の出資も仰がないと言う。

何事も「沖縄ファースト」で現地密着型を好む沖縄独特の風土に、セブンイレブンの企業文化は果たして受け入れられるのか?根付くのか?日本屈指のインバウンド経済圏でもある沖縄でのセブンイレブンと先行する二社との戦いは、店舗の飽和と客の多様化と言う点で、コンビニの未来を占う布石と見られている。
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