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news commentary

ご臨終

2011-12-26 15:15:52 | Weblog

「コンクリートから人へ」という民主党のマニフェストが、八ッ場ダムの建設再開で事実上総崩れになった、とメディアが伝えた。そんな政党がいまだに政権の座にとどまっているのは、とって代わる政党がどこにもないせいだ。今日の状況をもたらしたのは自民党の長期政権だ。自民党も、自民党の別働隊のような民主党も、ともに×だが、自民党に寄りそった公明党や、自民党からスピンアウトした弱小政党を信用する人はさらに少なく、ましてや社会主義を標榜する政党はこの国では不人気だ。

したがって出口なし、の閉塞感がただよう。大阪の橋本や、名古屋の河村といったご仁が蠢動できるのはこうした環境があるからだ。

鳩山政権で八ッ場ダムの工事中止をとなえ、野田政権で八ッ場ダムの工事再開を了承した民主党の政調会長・前原誠司が、こんどは、人件費削減のために公務員法の分限免職の規定を幅広く適用したい、とテレビで言った。12月26日の朝刊が伝えた。2012年度の予算案で、借金が税収を上回った。4年連続の異常事態である。このままでは、公務員の地位だけを保全して、国や地方がつぶれることになる、というのが彼の理屈だ。

とうとうこの国もどんづまりまで来てしまった。

内閣府経済社会総合研究所が野村総合研究所に委託した「公務員数の国際比較に関する調査」(2006年)によると、人口あたりでみた日本の公務員数は、先進国中で最も少ないグループに入る。国家公務員、公社・公団・政府系企業、地方公務員、国防を含めた公務員の数は、人口1000人でフランス96人、イギリス78人、米国74人、ドイツ70人。日本はフランスの半分以下の42人だった。

さらに、公務員を雇うために必要とされる経費のGDP比では、フランスが14%、米国が10%、ドイツとイギリスがそれぞれ8%、日本は先進5か国中最低の6%だった(2002年のデータでちょっと古いが)。
 
各国の公務員の質を問題にしなければ、日本は公務員による公共サービスが先進5か国中で最低と考えられる数値である(そうした公共サービスの貧困にもかかわらず、日本がなんとかもってきたのは、「お上」に従順な社会体質のおかげだ)。公務員を減らそうというのは、社会サービスを減らそうということである。

国会議員は特別職の国家公務員で、地方自治体の議員は特別職の地方公務員である。「タコの共食い」が始まったこの国、どうやらご臨終も近いようだ。

(2011.12.26 花崎泰雄)
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