先ごろの公開された国会議員の2022年分の所得等報告書で、7党首のうち、自民党総裁の岸田文雄首相が3863万円で所得額1位。2位が共産党の志位和夫委員長で2050万円。岸田氏の2021年分の所得は2837万円だったから、首相の職務を1年間続けた2022年の所得は前年より1000万円ほど増えた。
所得増と関係があるのかどうかは不明であるが、このところの岸田首相の旺盛な食欲も新聞が記録している。朝日新聞の「首相動静」は岸田氏の会食三昧を次のように伝えた。
<6月30日金曜日>。午後0時2分、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急。日本料理店「水簾」で森山裕自民党選対委員長と食事。午後6時27分、東京・赤坂の日本料理店「赤坂浅田」。松本総務相、加藤厚労相、河野デジタル相と食事。松野官房長官同席。
<6月29日木曜日>午後6時44分、東京・銀座の上一ビルディング。イタリア料理店「Meri Principessa」で平口洋同党衆院議員らと食事。
<6月28日水曜日>午後0時1分、東京・紀尾井町のホテルニューオータニ。日本料理店「千羽鶴」で同党の二階俊博元幹事長、林幹雄元幹事長代理と食事。午後6時27分、東京・虎ノ門のホテル「The Okura Tokyo」。宴会場「ローズ」で秘書官と食事。
6月27日火曜日>午後6時58分、東京・銀座のすし店「銀座 鮨あらい」。自民党の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と食事。
<6月26日月曜日>午前7時53分、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急。宴会場「桜・橘」で原田一之日本民営鉄道協会会長らとの勉強会。森昌文首相補佐官、藤井直樹国土交通事務次官同席。
4000万円弱の所得があれば、この程度の会食費用は岸田氏のポケットマネーでまかなえるのかどうか――と想像しても意味はない。政治家の行動には私事と公務の境界がはっきりしない部分がある。例えば、仮定の話であるが、ある首相が自分の子どもを首相秘書官に任命し、しばらくして不祥事を理由に更迭したとき、首相が他の秘書官と一緒に秘書官であった息子をホテルのレストランに招き食事しながら秘書官の職務について改めて話し合ったとしよう。その時の費用は、私費を当てるのが適当なのか、会合費・会議費として処理できるのか、人によって判断が異なるだろう。
それにしても、高額な飲み食いを日常茶飯にしている日本の政治家は少なくない。
2020年12月4日の朝日新聞デジタル版によると、同紙記者が閣僚らの政治資金収支報告書(2018-19年)をもとに調べたところ、飲食代が2年間で1億5千万円にのぼった。
その結果、この2年間で政治家側は1234店に計1922回、総額1億5358万431円を支出していた。支出先の1位から4位までをホテル関係が占めていた。支出回数を議員別に見ると、最多は武田良太総務相(当時)の443回(計3151万1447円)。支出回数では、麻生太郎財務相(当時)が335回(4551万7085円)で続いた。支出額は最多で、1回あたりの平均支出は、28人中トップの約13万6千円。
政治資金は政治資金であって議員のポケットマネーではない。なぜならポケットマネーによる会食であれば政治資金収支報告書に記載する必要はないからだ。
政治的な会合の合間に食事をともにしているのか、食事をするために会合を開いているのか、これまた判別に苦しむところがある。首相が政治の一環として人に会うのであれば、そのために官邸がある。官邸には食堂もあって、そこのかけ蕎麦はうまい、ということになっている。菅義偉元首相は官邸食堂のかけ蕎麦が好きだったと、どこかの新聞で読んだ記憶がある。多忙な首相が官邸を出て、近くのレストランで会食するのは、政務の一環なのか、息抜きなのか。判定が難しいところである。
その昔、「待合政治」という言葉が世間に流通していた。待合政治とは、待合茶屋で談合・折衝を重ねることによって、取り運ばれる政治、と辞書は説明する。待合茶屋とは、男女の密会や芸妓と客のための席を貸す茶屋のこと、と辞書は言う。
自民党政治の近代化で待合政治がすたれ、待合という施設が次々と店を閉めたのはこれまた昔の話である。待合からホテルへ場所は変わったが、自民党政権の待合政治ぶりは形を変えていまだ健在である。
(2023.7.7 花崎泰雄)
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