「役所に内定の誓約書、
出してきたよ」
末娘の報告に、
やっと胸を撫で下ろした。
内定先は市役所だった。
それは、これからも身近にいてくれる、
確かな証しだった。
四人の子供がいる。
男と女半々という見事な産み分けだった。
賑やかだった家庭が、
いつの間にか
夫婦と末娘の三人暮らしになってしまった。
寂しさは募る一方だった。
息子らは遠くの町に就職して、
盆正月すら戻れずにいる。
いま住む町が、
彼らのふるさとになってしまったかのようだ。
最初に授かった長女は
、少し離れた町に嫁ぎ、
母となり妻としても忙しく、
やはり田舎に帰ることは、
滅多にない。
「そんな時代よ」
「そうだな、仕方ないか」
夫婦の会話に、
明日への希望はなく、
二人きりの暮らしすら覚悟し始めた矢先だった。
「この町で、
保育園に勤めようかな」
末娘がいきなり言い出した。
大学を出たら町で働く気満々だったのが、
いきなりの翻意である。
呆気にとられたが、
近くにいてくれるというだけで
、内心は喜びに溢れた。
とはいえ
、田舎で仕事をするのは容易ではない。
働き場が少ないのだ。
しかし、末娘は親の意表をついて、
市役所の採用試験に挑戦した。
万に一つもない可能性に賭けたのだ。
そして彼女は、
ついに夢を実現させた。
「一人ぐらい近くにいないと、
寂しいもん」
そんな親孝行もあるのだと、
得意顔の末娘は、
後光がさして見えた。
出してきたよ」
末娘の報告に、
やっと胸を撫で下ろした。
内定先は市役所だった。
それは、これからも身近にいてくれる、
確かな証しだった。
四人の子供がいる。
男と女半々という見事な産み分けだった。
賑やかだった家庭が、
いつの間にか
夫婦と末娘の三人暮らしになってしまった。
寂しさは募る一方だった。
息子らは遠くの町に就職して、
盆正月すら戻れずにいる。
いま住む町が、
彼らのふるさとになってしまったかのようだ。
最初に授かった長女は
、少し離れた町に嫁ぎ、
母となり妻としても忙しく、
やはり田舎に帰ることは、
滅多にない。
「そんな時代よ」
「そうだな、仕方ないか」
夫婦の会話に、
明日への希望はなく、
二人きりの暮らしすら覚悟し始めた矢先だった。
「この町で、
保育園に勤めようかな」
末娘がいきなり言い出した。
大学を出たら町で働く気満々だったのが、
いきなりの翻意である。
呆気にとられたが、
近くにいてくれるというだけで
、内心は喜びに溢れた。
とはいえ
、田舎で仕事をするのは容易ではない。
働き場が少ないのだ。
しかし、末娘は親の意表をついて、
市役所の採用試験に挑戦した。
万に一つもない可能性に賭けたのだ。
そして彼女は、
ついに夢を実現させた。
「一人ぐらい近くにいないと、
寂しいもん」
そんな親孝行もあるのだと、
得意顔の末娘は、
後光がさして見えた。