人見知りする子供だった。相手が誰でもモジモジしてしまい、うまく喋れなかった。次に顔が赤らんで、友達によくからかわれた。
大人になっても、顔が赤くなるのは、治らなかった。年長者や上司相手でもそうだが、女性を前にすると必ず赤面した。何か変なことを考えているように思われているのではと気になり、より一層赤面は酷くなった。
そのせいで、青年時代は悲惨だった。男友達は何とか取り繕えるようになったものの、女性はどうしようもなかった。恋や愛など無縁で過ごした。といっても、女性の付き合いに憶病な分、片想いはよくした。憧れの女性のことを想うと赤面する自分が、情けなく恥ずかしくて堪らなかった。
「顔が赤くなるのは、純粋な証拠よ。それって、あなたが自慢していい個性だわ」
そういったのは、ひと回り以上離れた女の子。その言葉に救われた。のちに彼女と結婚して三十年、でも赤面はいまも健在である。