老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

老師と少年 ❼ ~欲 望~

2020-08-28 16:03:32 | 老人と子ども
1648 老師と少年 ❼ ~欲 望~

第六夜 
神も虚無も受け容れることができず悶々としている少年
第六夜は(道の人)がどこからともなく、いつの間にか人々の中に現れた。

人は、死とは?、自分は誰か?などと
答えを欲している
答えがないことに耐えられない

道の人は話す。
「その答えとは何か? 何に対する答えか?
自分とは何か、なぜ生きるのかという問いかけの答えか?
違う。それはたった一つの欲望に対する答えだ」
(86頁)

「欲望だけが、生きていることの苦しみなのだ」(86頁)

自分であること、生きていることに苦しむ人は多くはない。
人間の欲は財産や地位や名誉であったりするのがほとんどだ。
何故か、人はそれを欲する。
他人に認められたいからだ、欲するものを身に抱えたいからだ。

欲望は持てないから苦しむが、持てたとしても苦しみはやまない。

「財産も地位も名誉も、人が生まれてくるときに一緒についてこない。
それは人が後からつくり出したものにすぎない。
つくり出したものは壊れ、得たものは失われる。
死は平等にすべてを奪う」
(88頁)

認知症老人になると、寝たきりになると
地位や名誉は関係なくなり
呆けて(惚けて)いくと立場(境遇)は同じになる。

棺に入ったときは財産を持っていくことはできない。
「死は平等にすべてを奪う」、その言葉通りである。
人間、死するときに何を遺してゆくのか。



内村鑑三著「後世への最大遺物 」岩波文庫に
興味深い話が書かれてある。


道の人は、
人間の欲望の先にあるものは、壊れ失われない永遠に存在するものを欲する。
答えを求めることも、『断念する』ことだ、と少年に語りかける。

少年は「ぼくにはわからない」、と。










お互い様

2020-08-28 07:34:10 | 老い楽の詩
1647 お互い様

一人の介護従事者は 
百人の老人を介護している
つもりでいるけれど

百人の老人から
あなたは見られていることに
気がついているだろうか

好きな言葉ではないがよく使われる
「介護する人」は
「介護される人」をどう見ているのだろうか
「介護される人」は
「介護する人」をどう思っているのだろうか

「介護される人」は
いつも心のなかで 呟いている
いつもお世話になり 申し訳ないのです
あなたに返すものがなく 心苦しく思います

あなたは 隣に住む人から
「お土産です」「旬のものです」と
頂いてばかりいると 
本当に申し訳ないと思い
あなたは隣の人に お返しをするでしょう
それは お互い様だから

一方的に頂いているばかりいると
心苦しく思うのです

「介護される人」は
介護受けるばかりで申し訳思っています
「介護する人」は
気がついているのだろうか

介護する人は
すべてしてあげることが
優しいことだと思っているのだろうか

寝たきり老人は何もできない
認知症老人は何もわからない
本当にそうだろうか

穏やかな老人 忍従老人 捻くれ老人 我儘老人 
いろいろいるけれど
どんな老人でも
“よいところ” “できるところ”を
見つけ それを褒めるところから
介護が始まる

ベッドやトイレなどで
老人がつかまり立ちができたら
介護する人は
「立つことができて 助かるよ」
「介護が楽になったよ」と
褒めること
その一言で老人は
「私も役に立つ」と
心のなかで嬉しくなり
あなたに「お返しすることができた」と

記憶が忘れ どうしていいかわからないが
いつもあなたから頂いた親切は忘れない
息子の名前は忘れたけど
息子はお腹を空かして
学校から帰ってはいないかと心配している
言葉は失ったけれど
介護する人の心はよく見える

記憶が薄れても
体で覚えたことはいまも上手にできる
(昔とった杵柄)
できることを お願いされることで
私は心が落ち着き 居心地がよくなる
あなたから「ありがとう」と言われ
あなたの役に立てて 嬉しいです

人生も 介護も お互い様
助けたり 助けられたリ

あなたが居ることで
心の支えになる