HIBARIピアノ教室レッスン日記♪

ピアノのレッスン日記、その他ヒバリ先生が見聞きした音楽関係・芸術関係etcの日記。

ブルクミュラー「ちょっぴり不満」

2011年01月22日 | ブルクミュラー
Y子ちゃん(小5):
ブルクミュラーの「ちょっぴり不満」に入りました。

ひととおり自分で練習してきて、2、3の音間違いなどを除き 大体弾けています。
ただし、アーティキュレーションやダイナミクスはまったくなく、一本調子です。
そこで、話しかけながら 一緒にイメージを想像してみることにしました。

「『ちょっぴり不満』って、どーんな感じなんだろうね?」と聞いてみます。
Y子ちゃんは、考えながら
「うーん・・・ちょっと、やだっていうか、ちょっと悲しい。曲も悲しい」
「そうだねえ。『ちょっぴり』だから、そんな深刻な不幸、ってことではないと思うけど、やっぱりちょっと悲しいんだよね。
「うん」
「たとえばさ、こんなことってない? 自分はそれなりにやってるんだけれども、お母さんからは『きちんとしなさい!』って言われちゃうとか」
「うん、ある」
「そんなときって、自分では『私はそんなつもりじゃない。自分ではがんばりたいと思ってるの。だけどなかなかやれなかった』とかって思っててさ」
「うんうん」
「お友だちから誤解されちゃって・・・とかさ。そういう、『やだな~』とか『悲しい~』とかって思う気持ちが、左手の『たりらり、たりらり』ってザワザワする心の中。そして、右手の、1本 スーッと通ってるメロディーが、自分の理想とか、『ほんとは、私はこう思ってるの』っていう気持ち」
「ああ~」
「その、2つの気持ちがゆれ動いて、右にいったり左にいったりしてるって感じじゃない?そしてけっこう傷ついたりしてるんだけども、みんなの前ではその気持ちを隠して、明るくふるまってる。でも本当は、悲しい」
「うん、そうかー」
こんな風にイメージを想像してみながら、実際にピアノで弾いてみます。
「左手は、もっと押さえた感じにね。自分が悲しんでる気持ちは、外には見せないようにしてるんだから。逆に、右手は美しく理想を歌おう」
1回弾くごとに、みるみるY子ちゃんの音色は美しく表現されていきます。
前半をこうして弾き、後半にはいって 少し曲調が盛り上がったところにかかりました。
「ここはどう?右手と左手が揃って和音を弾きながら、一気にクレッシェンドして・・・ガーン!」
「ああ・・・もうここは・・・」
「爆発しちゃったねえ?」
「そう」
「だって、心の奥の『やだなーの気持ち』と外に見えてる部分が一致しちゃったからね。ついに叫んじゃったね。『やだー!』」
「うん!」
Y子ちゃんの演奏も真に迫ってきました。
もう、フィニッシュ部分をまとめるだけです。
「いったんは爆発したけど、最後はだんだん静かに終わっていってるね。この子はいい子だから、そのまま家出したりグレちゃったりはしないみたいね。いっときは爆発したけど、だんだん頭を冷やして冷静になって、これを経験として成長していく・・・って感じかな」
「ああ、そうかー」
10才の少女の「ちょっぴり不満」を、日常よく起こりうるのではないかというシチュエーションでイメージしてみましたが、きくと Y子ちゃんには けっこうツボを突いていたようでした。
来週、10才のY子ちゃんのみずみずしい感性を注いだ「ちょっぴり不満」の完成を、楽しみに待ちたいと思います。