三味線弾きの日常。

おもに津軽三味線弾き唄い。
ときどき地歌・上方唄。こっそり義太夫三味線。
三味の音を一人でも多くの人に届けたい。

未来のサムライミュージシャンズ発掘コンテスト 優秀賞受賞!

春を恨んだりはしない。

2016年03月08日 | 読書
岩手に行く前にこれを読んでいた。

春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと
池澤夏樹
中央公論新社



タイトルに取られているのは
ヴィスワヴァ・シンボルスカの「眺めとの別れ」という詩の一節であると、
書名と同じ名前をもつ第二章で紹介されている。

その詩に続けて、
古歌「深草の野辺の桜し心あらば今年ばかりは墨染めに咲け」が引かれている。

あの年の春にも桜はいつもと同じように美しく咲き、
今年もまた同じように咲くのだろう。

春というのはやはり象徴的だ。
芽吹く季節。色彩が変わる季節。
季節がまた巡ってきたことを感じさせる。
だから、不在もまた感じられるのだろう。

あれから、この季節が巡ってくるたびに
誰もが思い出すことになる。


自然というもの、
ときに猛威を振るい、人の心など関係なく過ぎてゆくものを
日本人が古来どのように捉えてきたか、
それは現代においても実はさほど変わっていない、
そのことが、どのように社会に影響を与えてきたか、というあたりで、
良くも悪くも、私は、私たちは、日本人なのだと思った。


だから、桜は何よりもその象徴に見えてくる。

ずいぶん前に、桜をモチーフにした唄を書いた。
今度書くときにはきっと、あの古歌を思い出すだろう。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする