あの日、2011年3月11日の夜、
東京のすみだトリフォニーホールでコンサートが開かれた。
演奏されたのはマーラーの交響曲第五番。
この実話をもとに作られた小説が『あの日、マーラーが』。
こんなときに音楽なんて。娯楽なんて。
そう思いながらも
コンサートを開いた人たちがいて、
演奏した人たちがいて、
聴きに行った人たちがいる。
それぞれの想い、それぞれの事情を抱えて。
あの後、しばらくの間、世の中は“自粛”ムードで覆われた。
多くのイベントが中止あるいは延期されて、
実際に私も依頼されていた演奏がキャンセルになったりもした。
そんな“自粛”ムードに違和感を感じてもいたけれど、
それを口に出せるほど、自分の音楽に確信もなかった。
こちらの著者は、震災の二日後である3月13日に予定されていた
自身の主催イベントを中止し、
同じ日に予定していた、別の劇団のアフタートークへの出演を辞退した。
もしも時間が巻き戻せたとしても、やはり私は同じようにするだろう。それはそうだ。
だが、そもそもタイムマシンは、この世に存在していないし、そして私は今も、泣きたい
ほどに後悔している。
正解はないのだ。
あのときにも。今も。これから先も。
でも、すべては正解なのだ。
私のも。あなたのも。誰のものも。
東京のすみだトリフォニーホールでコンサートが開かれた。
演奏されたのはマーラーの交響曲第五番。
この実話をもとに作られた小説が『あの日、マーラーが』。
あの日、マーラーが | |
藤谷治 | |
朝日新聞出版 |
こんなときに音楽なんて。娯楽なんて。
そう思いながらも
コンサートを開いた人たちがいて、
演奏した人たちがいて、
聴きに行った人たちがいる。
それぞれの想い、それぞれの事情を抱えて。
あの後、しばらくの間、世の中は“自粛”ムードで覆われた。
多くのイベントが中止あるいは延期されて、
実際に私も依頼されていた演奏がキャンセルになったりもした。
そんな“自粛”ムードに違和感を感じてもいたけれど、
それを口に出せるほど、自分の音楽に確信もなかった。
批評時空間 | |
佐々木敦 | |
新潮社 |
こちらの著者は、震災の二日後である3月13日に予定されていた
自身の主催イベントを中止し、
同じ日に予定していた、別の劇団のアフタートークへの出演を辞退した。
もしも時間が巻き戻せたとしても、やはり私は同じようにするだろう。それはそうだ。
だが、そもそもタイムマシンは、この世に存在していないし、そして私は今も、泣きたい
ほどに後悔している。
正解はないのだ。
あのときにも。今も。これから先も。
でも、すべては正解なのだ。
私のも。あなたのも。誰のものも。