漢字書き取り教室の入口に10人ほどの利用者がいる。
「さあ!はじめましょう!」と先輩ボランティアが声を掛けると、
ぞろぞろ教室に入って来た。
全員かと思ったら、男女合わせて半分の五人だ。
あとの半分は介助者であった。
お兄さんお姉さん合わせて五人は、
車椅子の人、杖の人、乳母車用の押し車に掴まってくる人・・・
椅子に腰掛けるには、全員、椅子を持って行ってこけないように、
上手に座らせる必要がある。
(「団塊世代のおじさん masamikeitas」さんのブログで、
高齢者をおじさんと呼ぶのは気分を害すると知ったので、
お兄さん、お姉さんと呼ぶことにした。)
何とか全員座った所で、介助者が出て行ってまた一人連れてきた。
元気の良いお姉さんだ。
大きな声で、「私 大学卒業したの、英語話せるの」と言う。
皆さんは何度も聞いているらしく、
「そう」と返事するだけ。
ボクがつい「どこの大学?」と聞いたら、
「エイワ女子大」と云った。
東洋英和女子大かなと思ったが、先輩が印刷物を配布し始めたので、
それを手伝った。
(余計なことを聞いてしまっただろうか 反省)
このお姉さんもそうだが、ほかの人も認知症気味で、
話が噛み合わない。
このホームの隣は小学校で、子供のワイワイ騒ぐ声がする。
その声を聞き入って他には目もくれない人が居る。
また、教室に入ってくるなり、AKB48の写真集を見せろという人。
ボクはAKB48の写真なんか見ても誰なんだか分からないのに、
AKB48の写真集を見て、ニコニコ楽しんでいるお兄さんもいる。
例のお姉さんは、「歌を忘れたカナリヤ」の歌を大声で唄い出した。
終わると「ふるさと」「汽車ポッポ」次から次へ唄い出していく。
プリントを貰った男性は、振り仮名をつけたり、漢字の書き取りをしたりして、
黙ってもくもくと作業をしている。
さすが漢字の書き取りをする人は自信があるのだろう、
一つも間違っていなかった。
「終わったら100点か花丸をつけてね」と先輩に言われていたので、
大きな花丸を付けたら、大喜びをしてくれたのには、感激した。
花丸なんて、貰ったこともなければ、書くのは初めてのことだからだ。
「太陽」の大に点があり、「大切」の大に点が無いのをかき分けたのに、
ボクは驚いた。
久しく太陽なんて書いたことが無かったからである。
そこで「よく点があるのを知っていましたね」と言ったら、
書いた男性、よほど嬉しかったと見え、ニコニコしてくれた。
「お仕事何なさっていたのですか」と聞くと、
「法律の仕事」と云った後、
急に寂しそうな表情に変わった。
なにか良くないことでも思い出したのであろうか。
こうしたとき詳しく突っ込んで聞いてはいけないようだ。(反省)
法律の仕事となると、弁護士、検察官、検察事務官、警察官、
司法書士、行政書士、その他いろんな仕事がある。
いずれにしろ高度な知識と判断力が伴う仕事が多い。
まだ若いのに認知症と思える。
次は歌の時間。
ボクは以前にも書いたが歌はめっぽう苦手である。
ボクに出来る事は大きく書いた歌詞カードを、
両手で広げてみんなに見せるくらいしかできない。
残り一時間で、何曲か歌って終わった。
どの方もボクよりみんな若い。
先輩の方は、一人しかいらっしゃらない。
年齢だけを考えると、ボクの方が面倒見てほしい年代なのだ。
どうやらこれもボクにできるボランティアでは無さそうだ。