WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ローディング・ゾーン

2008年01月21日 | 今日の一枚(Q-R)

●今日の一枚 210●

Roy Buchanan

Roading Zone

 

 1970年代のロックファンなら周知のように、ジェフ・ベックの『ギター殺人者の凱旋(Blow By Blow)』収録の名曲・名演「哀しみの恋人たち」は、《ロイ・ブキャナンに捧ぐ》とクレジットされている。中学生だった私が、ロイ・ブキャナンなどという凡そ中学生にとってはマイナーなミュージシャンを知ったのはそのためだ。

 ロイ・ブキャナンの1977作品『ローディング・ゾーン』。ロイ・ブキャナンの作品では、一番好きな作品であり、カセットテープが擦り切れる程聴いたアルバムである。輸入盤のCDを購入したのは最近のことだ。

 まったく、うまいロックギタリストである。味もある。ジェフ・ベックが影響を受けたのももっともだ。このアルバムを聴いて感じるのは、ベックのサウンドとの親近性である。ベックが影響を受けたのだから当然ともいえるが、しかしよく考えると、例えばベックの『Blow By Blow』は1975年の作品なのに対して、ロイのこのアルバムは1977年のものである。しかもサイドメンをよく見ると、ヤン・ハマーやスタンリー・クラークというクロスオーバー時代のベックと関係の深いミュージシャンの名前が記されている。えっ、まさか……。もしかして、このアルバムは、ジェフ・ベックに影響を与えたロイ・ブキャナンが、そのベックに触発されて制作したアルバムなのでは……?。

 ポップで軽快なテイストの③ The Circle が好きだ。ロイのギターが十分に表現された曲ではないが、曲の爽快なスピード感に魅了される。若い頃、自分で編集した高速道路運転用のカセットテープにも収録した記憶がある。作品の素晴らしさ、演奏の素晴らしさに感嘆しつつも、若い頃聴いたこの作品に接して脳裏を駆け巡るのは、ずっと昔の、このアルバムを繰り返し聴いた時代の情景ばかりだ。人間とは、あるいは音楽とはそのようなものなのだろうか……。