◎今日の一枚 214◎
Mal Waldron
The Quest
今日は休日であるが、HCを務める高校女子バスケットボール部の練習につきあった。出かける前にたまたま聴いたマル・ウォルドロン『ザ・クエスト』の最後の曲「ファイアー・ワルツ」が耳から離れず、練習を見ていてもずっとあの独特のリズムと節回しが頭の中で鳴り響いている有様だった。
1961年録音の『ザ・クエスト』。好きなアルバムである。1週間後にファイブスポットであの歴史的な録音を残すことになるマル・ウォルドロンとエリック・ドルフィーが、それに先駆けて行ったセッションである。マルについては、ずっと以前に書いたように、その晩年の演奏を至近距離で体験したことがある。本当にかっこよかった。以来、マルの作品を聴くと、そのときの情景が頭に浮かんでどうしようもない。恐らくは、一生そのイメージを背負って生きていくことになりそうだ。実際、若い時代のこの作品においても、そのソロパートにおいてマルのピアノの個性は十分に表れており、目をつぶると、私が見たライブの情景が今でもありありと浮かんでくる。
ところで、何といってもドルフィーである。この作品においても彼の存在感はとてつもなく大きい。彼のヘンテコな音楽の何が私を惹きつけるのか、うまく説明できないのだが、とにかく私はなんとなく好きなのである。しいて言えば、そのヘンテコな雰囲気に惹きつけられるとでもいおうか。難しい理論上のことや彼がjazz史にもたらした革新的なことがらなどは書物で読んだこと以外は正直よくわからないのだが、彼が創り出す音楽世界の雰囲気がすごく好きなのだ。ドルフィーの音楽の何が自分を惹きつけるのか。少々理屈っぽい私は、それをきちんと説明したいという欲望を抑えきれない。しかし、今は「説明できない」ということに耐え続けよう。人は心をゆすぶられるような不安定な状態を抜け出すべく、言葉によって説明し、心を安定させようとするのだから……。ドルフィーの音楽を言葉で説明した時、その音楽がもたらす「感動」ももしかしたら消え去ってしまうのかも知れない。
ドルフィーを熱狂的に聴いたことはない。しかし、どんな時でもずっと好きだった。なんとなく好きなのだが、それは確かなものだ。