◎今日の一枚 222◎
Steve Kuhn
Remembering Tomorrow
寒い日が続いている。寒いのは嫌だが、空気が澄んでいる。とても清清しい気持だ。こういう日には、やはりECMサウンドだ。
端正で美しいピアノの響きだ。こういうの好きだなあ。スティーブ・キューンの1995年録音盤、『リメンバリング・トゥモロウ』。タイトルもなかなかいいではないか。キューンが約10年ぶりにECMにカムバックした作品である。まさしくECM的サウンドだ。近年のvenusレーベルでの骨太でノリのいいキューンも嫌いではないが、このアルバムのキューンは繊細で今にも消え入りそうな、しかし研ぎ澄まされた音だ。同じピアニストなのにレーベルによってこうもちがうのだから不思議なものだ。私の知っている限りにおいて、スティーブ・キューンの最高傑作ではないだろうか。澄みきった、それでいてどこか墨絵のように霧のかかったサウンドに耳を傾けていると、心まで浄化されてくるような気になる。
時折ピアノをあおるようにに割り込んでくるJoey Baronのドラムが目立っている。録音的にも鮮度が良く、なかなかスリリングなのだけれど、シンパルがカラフル過ぎて、あるいはタムが強すぎてちょっとうるさいなと思うこともある。いずれにせよ、存在感のあるドラムであることは間違いない。
寒い冬の景色を見つつ、暖かいココアでも飲みながら聴きたい一枚である。