☆今日の一枚 334☆
The Secret Policeman's Concert
昨日、Book Off でスティングの『ソウル・ゲージ』の中古CDを、何と300円で買ったのだが、そういえばスティングのアルバムはカセットテープでたくさんあったよなと思って探してみると、すっかり忘れていた面白いアルバムを発見した。1981年の『シークレット・ポリスマン・コンサート』のライブ録音だ。AXIA GT-Ⅰx(nomal position)というテープに録音されており、やや音の広がりが劣る気はするものの、それほど音質が悪いとは感じない。針のノイズの存在から音源はLPだと思われるが、webで調べてみるとLPの曲順は下の通り。私のカセットテープとは若干曲順が異なっているようだ。あるいは、テープに収まるように編集したのかもしれない。
SIDE 1
1.ROXANNE/スティング
2.MESSAGE IN A BOTTLE 孤独のメッセージ/スティング
3.CAUSE WE'VE ENDED ASLOVERS 哀しみの恋人たち
/ジェフ・ベック&エリック・クラプトン
4.FARTHER UP THE ROAD/ 〃
5.CROSSROADS/ 〃
6.I DON'T LIKE MONDAYS 哀愁のマンディ
/ボブ・ゲルドフ&ジョニー・フィンガーズ
SIDE 2
1.IN THE AIR TONIGHT 夜の囁き/フィル・コリンズ
2.THE ROOF IS LEAKING 天を仰いで/ 〃
3.THE UNIVERSAL SOLDIER/ドノバン
4.CATCH THE WIND/ 〃
5.I SHALL BE RELEASED/シークレット・ポリスマン
『シークレット・ポリスマン・コンサート』は、1981年にアムネスティ・インターナショナルに賛同するアーチスト達によって、ロンドンのシアター・ロイヤルで数回にわたり開かれたコンサートである。アムネスティ・インターナショナルは、政治犯として不当に投獄されている人々、いわゆる「良心の囚人」の解放と人権の擁護を訴える組織だが、当時大学生だった私は、教育学の先生が南アフリカのアパルトヘイトに反対する立場から、投獄されていたネルソン・マンデーラの救済活動をやっていた影響を受け、アムネスティーには特に関心があった。実際、南アフリカに行くことを勧められ、その気になったこともあったのだ。結局、日本中世史の勉強のため断念・挫折したのだが・・・・。
さて、ギターの2大ヒーロー、ジェフ・ベックとエリック・クラプトンの初競演ということで話題となったこのコンサートだが、今聴いて私の心をとらえるのはスティングがギターの弾き語りで歌う「ロクサーヌ」と「孤独のメッセージ」の美しさである。原曲の芯の部分をこれだけ純粋に抽出されると、感動、万感胸にせまるものがある。ブームタウン・ラッツのボブ・ゲルドフがピアノの弾き語りで歌う「哀愁のマンディ」もなかなかいい。何か心が熱くなる。
ちょっと前のバングラディシュ救済コンサートはもちろんだか、USA for Africa といい、バンド・エイドといい、少なくともこのころまでは、批判精神をもって社会的活動を行うロック・ミュージシャンは確かに存在したのだな、と改めて思う。最近の若いミュージシャンはどうなのだろう。
スティングについては、この前取り上げた『ナッシング・ライク・ザ・サン』に収録されている「孤独のダンス」も、チリのピノチェト軍事独裁政権下の人権抑圧を批判したもので、反体制者として逮捕され行方不明となった配偶者・息子の解放を訴える女性たちが、路上で形見の衣服を抱き一人一人踊るさまを歌ったものだった。また、ブラジルの先住民カイヤポ族らとともに熱帯雨林保護活動も行っているらしい。最近では、プーチン政権を批判して逮捕されたロシアのパンク・ロックバンド「プッシー・ライオネット」を擁護し、ロシア政府を批判する発言をして注目されたようだ。この発言をモスクワで行ったことがすごい。さすがに、アムネスティー・インターナショナルの支持者、スティングだ。
「プッシー・ライオットのメンバーが7年も刑務所に入るというのは、あまりにひどい。自分の意見を言うのは、民主主義では合法で最も基本的な権利です。政治家は異なる意見に寛容でないといけない。このバランス感覚やユーモアのセンスは、強さの表れであって、弱さを示すものではありません。ロシア政府は、この誤った起訴を取り下げ、3人のアーティストを普通の生活に戻し、子どもたちの元に帰すべきです。」
迂闊にも私は、この問題を今日まで知らなかった。アムネスティーは今後もプッシー・ライオットのメンバーの釈放を求めるキャンペーンを続けていくということであり、注目していかねばならない。