WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

「訪れ」

2012年09月29日 | 今日の一枚(G-H)

☆今日の一枚 335☆

Grover Washington jr.

The Best Is Yet To Come

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 ちよっとしたきっかけがあって古いカセットテープを引っ張り出してしたら、”僕らの時代のBGM” グローヴァー・ワシントンJrのものを数本発見。『ワインライト』と、『ストロベリー・ムーン』、『カム・モーニン』、『スカイラーキン』、そして『訪れ』だ。懐かしくて懐かしくて、ここ2~3日それらのテープを聴きっぱなした。

 グローヴァー・ワシントンJrは”スムース・ジャズの父”などといわれるらしい。スムース・ジャズというのは、フュージョンのスタイルのひとつで、フュージョンにR&Bの要素を混ぜたものらしい。まあ、そういわれれば確かにそんな感じがするが、私自身、そんな感じで聴いたことはなかったし、スムース・ジャズなどという言葉も知らなかった。私は熱いフュージョンというか、パースペクティヴとしてはジャズの範疇にひきつけて聴いていたような気がする。

 1982年作品の『The Best Is Yet To Come』。邦訳タイトルは『訪れ』だ。『訪れ』ってなんか古風でいいじゃないか。洗練された言葉だ。私は、直訳するともっとスケベな言葉になるのかと思っていたのだが、「未来はもっとよくなる」とか、「輝かしい時はまだ訪れていない」とか、あるいは「お楽しみはこれからよ」とかの意味があるらしい。印象的な美しいジャケットである。しかしこのジャケットをみると、The Best Is Yet To Comeはやはりスケベな意味なのではないだろうかなどとあらぬことを想像してしまう。サウンドは今聴くと、若干甘すぎるかなと思う部分もあるが、展開に起伏があり、情感のこもったブローもあるなど、基本的に嫌いではないし、よい演奏だと思う。フュージョンは聴き飽きすることが多いといわれるが、グローヴァー・ワシントンJrに関しては、そう感じたことはあまりない。タイトル曲のThe Best Is Yet To Comeなんて本当にいい曲で、ずっとグロヴァーを聴かない時代にあっても、たまに頭の中に思い浮かんで鳴り響いていた曲なのだ。

 『訪れ』は、sonyのHF-ES46というテープに収録されていた。nomalテープということもありややダイナミックさに欠ける気もするが、まあカセットテープだと思えばストレスなく聴ける。CDはでているのだろうか。ちょっとwebで検索したらどうも廃盤のようでもある。ただ私は、一緒に1980年代を生きたこのカセットテープで不足ないと思っている。

 カセットテープはいったい何本あるかわからないのだが、ざっと見て500本以上はありそうだ。半分がジャズ系、もう半分がロック系といった感じだろうか。震災でバラバラに崩れ落ち、とりあえず無造作にラックに入れた状態のままなので、どこに何があるかわからない。その不自由が幸いしてか、思わぬものに出合うこともしばしばである。メインのステレオにつないでいたテープデッキを書斎に持ち込み、BOSEの小型スピーカー125で聴いている。