●今日の一枚 400●
Miles Davis
Bags Groove
朝起きて、何か聴こうかなとCDの棚を物色していてたまたま目についた。それにしてもかっこいいジャケットである。文字だけで構成されたジャケットだが、ポップでお洒落だ。文字というものが意味情報の伝達だけでなく、絵画的なデザインの役割も果たしている格好の例だろう。1954年録音の、マイルス・ディヴィス『バグス・グルーヴ』である。
しばらくぶりに聴いたが、内容の方も全編が良質なかっこよさに満ちいてる。ホレス・シルヴァーがピアノを担当する③以降はいつもながらの普通に素晴らしいマイルス。非常にブルージーな演奏である。セロニアス・モンクがピアノを務める①及び②のBags Grooveの2つのテイクは、モンクとマイルスの掛け合いが手に取るように伝わってくる、臨場感あふれる演奏だ。この時の演奏で、マイルスがモンクに対して自分がソロを吹いているときは伴奏をつけないよう指示したことから、「ケンカ・セッション」といわれているようだ。確かに、モンクのピアノはマイルスを挑発しているようにも聞こえる個性的なものだ。特に、②の方は強烈である。アーマッド・ジャマルの影響を受けて新しいサウンドの方向性をめざしていたマイルスにとって、モンクの個性はあまりにアクが強く、大き過ぎたということなのであろう。
1954年のクリスマスイヴにマイルスが行ったレコーディングは、この『バグス・グルーヴ』と『マイルス・ディヴィス・アンド・モダンジャズ・ジャイアンツ』の2枚に分散収録されているが、モンクとの共演は『モダンジャズ・ジャイアンツ』に6曲、『バグス・グルーヴ』に2曲が収められている。『モダンジャズ・ジャイアンツ』の「ザ・マン・アイ・ラブ」収録中にモンクがソロパートを弾くのを途中でやめてしまったことや、このレコーディングの後、モンクとマイルスは再び共演することがなかったことから、因縁のセッションというジャズの「伝説」が生まれたようだ。