WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

2021年01月17日 | 今日の一枚(E-F)
◎今日の一枚 463◎
Fleetwood Mac
Rumours
 そういえば去年、フリートウット・マックの『噂』(Rumours)が42年ぶりに全米ヒットチャートのトップ10に入った(2020.10)というニュースがあった。動画投稿アプリTikTokに収録曲の「ドリームズ」が使用されたことがきっかけということだった。
 そんなことを思い出したのは、前回の記事(こちら→)で取り上げたエイミー・ベルという歌手について検索していたら、聞き覚えのあるメロディーを歌っている動画に出くわしたからである。なんだっけ、と少し考えて、「ドリームス」であることを思い出した。いい曲だ。生ギター一本で歌うエイミー・ベルは、迫力があってなかなかいい。はっきりいって、スティーヴィー・ニックスよりいいかもしれない。
 今日の一枚は、フリートウット・マックの1977年作品『噂』である。彼らの大ヒット作だ。今聴いても新鮮なサウンドである。私は、ピーター・グリーンがいたころのブルース・ロック路線のフリートウット・マックが好きだったが、ポップ路線になってからのマックも嫌いではなかった。全盛期の彼らのアルバムでよく聴いたのは、この『噂』と『ファンタスティック・マック』と『タンゴ・イン・ザ・ナイト』である。
 『噂』はグループに在籍していた2組のカップルの破局から生まれたベストセラーアルバムである。前作『ファンタスティック・マック』の商業的な成功で、同棲していたリンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックス、そしてジョン・マクヴィーとクリスティーン・マクヴィー夫妻のそれぞれの関係の微妙なバランスが崩れだしたのである。別離したカップルーが互いの内面を吐露するような歌詞が、アルバム全体に迫真的なリアリティーをもたらしている。《噂》というタイトルも、それらが噂であってほしいというところからきているらしい。
 今、⑥ Songbirdが流れている。美しいサウンドだ。

エイミー・ベルという歌手

2021年01月17日 | 今日の一枚(Q-R)
◎今日の一枚 462◎
Rod Stewart
Foot Loose & Fancy Free
 これは凄い。何気なくYou Tube をいじっていてたまたまタッチした動画に思わず声を出してしまった。ロッド・スチュアートの2004年のロイヤルアルバートホールでのライブ映像である。曲は名曲「もう話したくない」(I don’t want to talk about it )、ロッドとデュエットしているのは、当時22歳で無名の、エイミー・ベル(Amy Belle)という歌手らしい。スコットランドのグラスゴーの路上で歌っているところを見いだされ、この一夜限りのライブに招待されたということだ。清楚でキュートでかわいらしい雰囲気もさることながら、歌の表現力がすごい。その情感溢れる歌唱は、完全に、ロッドを食っている。ロッドファンやコアなオールドロックファンの間では、すでに知れ渡ったことだったようだが、ロックから離れていた私はまったく知らなかった。とにかく、いい。

 というわけで、今日の一枚は、ロッド・スチュアートの1977年発表作『明日へのキックオフ』(Foot Loose & Fancy Free)である。「もう話したくない」は入っていないが、私の一番好きなアルバムである。高校時代、何年生の頃のことかは忘れたが、後ろの席だったバンカラのF君の影響で、ロッド・スチュアートを聴きはじめた。制服自由化の高校で、頑なにバンカラを守り通しているF君がロッド・スチュアートのファンだということが新鮮で興味深かった。彼からは、ロッド・スチュアートについていろいろと教えてもらったが、私には比較的新しかった『明日へのキックオフ』が一番しっくりきた。ロッドの抒情的な側面が強くでているアルバムだったように思う。このアルバムには後にロッドの名曲と評価され、ライブで繰り返し演奏されることになるナンバーがいくつも収録されている。① Hot Legs ③ You're In My Heart(胸につのる想い) ⑤ You Keep Me Hangin' On ⑧ I Was Only Joking(ただのジョークさ)などがそれである。
 しばらくぶりに聴いたが、今聴いても十分に魅力的な一枚であると思う。F君とは、高校卒業以来一度も会っていない。今、何をしているだろうか。