もうかれこれ四半世紀前に大阪から東京に出てきた。
学校で紹介されたボロアパートは代官山にあって渋谷の駅まで徒歩10分足らずの好立地だった
僕は陽もささない一階だったが同じ学校の新入生の女の子が入った二階の部屋からはビキニスタイルで日光浴する外人スチュワーデスが見えた
隣の大きな敷地には塀で囲まれた外国航空会社の寮があって
アパートはアメリカンスタイルの芝生が植えられた寮の庭に面していた
風呂なしキッチンなし共同トイレ四畳半の純日本風アパートの隣にリトルアメリカがあった
数分歩くと旧山の手通りで通称大使館通り呼ばれ
おしゃれなブティックや外国の大使館が街路樹の植えられた広い通りに面して建っていた。
少し通りを歩くと西郷山公園と呼ばれる目黒を見下ろす小高い公園があって
トレンディドラマのロケがよく行われていて
夕暮れの公園で僕は習いたてのキーボードを弾き、傍らには大家の飼うゴールデンレトルリバーのキッズがしゃがんでいた
夕焼け色に染まった太陽が眼下のビル群を照らし、ちょっとしたセレブ気分を味わっていた。
うどんの匂い漂う小さな路地がくにゃくにゃ曲がった大阪から
いきなり現在でも東京の住んでみたい街ベスト3に入る代官山での暮らしが始まった