使い古しの汚れた作業着を来て僕はその場所に立っていた
何処からか乾いたしょんべんの匂いがした
しょんべんの臭いはその公園の周り何処へ行っても漂っていた。
寝そべってフェンスにもたれかかった親父が乾いた咳をした
咳をしながら酒を煽っていた
酒を飲みながらまた咳をした
生きているか死んでいるのか寝転がって身動きしない人がいた
ここでは他人に関心を示さない
人だかりはオイチョカブだ
カモはあっという間にその日の日当を巻き上げられる
僕はただぼーと突っ立ってその光景を見ていた
「兄ちゃんこんにちは、今日は仕事無いんかい」
あやしいおっさんが言葉をかけて来た
「僕ぅ~今日の現場ここですねん、監督がお前は役に立たんから昼休みに現場の見張りでもしとけって言うもんやから」
「ふーん、日当なんぼ貰うとんねん」
「4900円です」
「安うっ~~そりゃ安いな、わしんとこの飯場入ったら日当5000円やで」
あやしいおっさんは片手を開いて見せた
その時、監督のハゲのシゲやんが昼飯から帰って来た。
関大の2部学生のウメとシンナーを吸いすぎて歯抜けが目立つ村上も戻って来た。
あやしいおっさんは
「けっ!」と言ってどっかへ行った
ハゲのシゲやんが言った
「お前タコ部屋に送られるとこやったぞ」
「ははは!」
皆で笑った
「そやけどひろ造やったら役たたんからタコ部屋放り出されるでぇ」
歯抜けの村上が言った
「ははは!」
皆でまた大笑いした
機嫌悪そうな顔で吉田も昼飯から帰って来た
吉田はいつも偉そうにしていた
どこぞの組に出入りしていて背中に墨まで入れていた
かと言って組の電話番は避けていた
根性なしだがブロック積みで鍛えたばか力は侮れなかった。
「帰りに新地に寄ってみんか」
ウメが言った
「寄ってどないすんねん、わしら皆、金無いやん」
「ははは」
また皆で笑った
皆、その頃流行っていたパチンコのフィーバー台にその日の日当をつぎ込んだ
村上は借金取りが現場まで来て頭をこづかれていた。
全然、仕事の役に立たなかったけれど会社は僕をクビにしなかった
2度目の大学受験に失敗して生まれて初めてアルバイトをした
とりあえず一番給料の高い所を選んだ
その最初の現場が釜ヶ崎だった