その頃はコンビニがまだ無かった
昼はめし屋でショーケースの中からサバの味噌煮や冷奴など自分の好きなおかずを選んでその分のお金を払う
作業着を来て皆に混ざって割りばしを食わえておかずを運んでいると
(わしも一人前の‘土方,やな)とか思った。
大学に落ちて取り敢えずバイトでもするかって感じでバイトを探した。
生まれて初めての仕事だった。給料の一番いいとこを探したら
仕事内容が「簡単な軽作業」とあった。
事務所の佐々木さんに連れられていかついおっさんのところに行った
「シゲやん今日からちょっとお前んとこの手元(てもと)で使うたってくれんか?」
(てもと・・って何やろ?助手って言うんやないやろか?)
と思った
仕事を始めたら案の定、くその役にも立たなかった。
会社もええ迷惑だったと思う
職場にはいろんな人がいた
同じバイトに吉岡さんがいた
歳は僕より5~6歳上だったと思うが
いつもにこにこして人当たりが良かった
給料日にバイト何人かを飲みに連れて行ってくれた
生まれて初めて女の子が横に付く店だった
こんな世界があるんやなと思ったが
支払いは吉岡さん一人が払った
吉岡さんは給料日に貰った給料を全部使った
吉岡さんは何でも前の会社で大きな交通事故を起こしたらしい
人生をもう捨てていた
その後、数日して会社に来なくなった
一番仲の良かったのは同じ歳のウメだった
ウメがある日こんな事を言った
「佐々木さんが昨日わしのアパートに酒持って訪ねて来てな」
佐々木さんは事務所にいて会社の幹部だった
包容力があって自分らバイトにも優しくて僕も尊敬していた
「佐々木さんがわしに正社員にならんかって言うんや」
「佐々木さんお前の事も言うとったで」
「あいつはあかんたれやって」
「わはは」
僕はやっぱりなって言う思いと少しだけ寂しい気がした