HIROZOU

おっさんの夜明け

鉄橋

2018-01-15 18:45:46 | メモリー

まだ2週間ほど前の去年の大晦日

京都から阪急電車の特急に乗って大阪の梅田に向かった

途中、急行も止まらない小さな駅をあっという間に通り過ぎ

安威川と言う名の川に架かる鉄橋を渡る

乗客の誰もが鉄橋を渡った事に気付かないほどのほんの一瞬

今からもう何十年も昔、十代の僕はその鉄橋を毎日、眺めて過ごした

鉄の窓枠と格子の入った年代物のガラス窓、割れたトタンの目隠し

三畳一間に小さな台所

朝、台所で顔を洗い窓を開けて頭をもたげると

雑草の生い茂った空地の向こうに鉄橋が見えた

京都から大阪へ

大阪から京都へ

茶色い車体の阪急電車が行き交った

色んな人生を乗せた電車が鉄橋を渡る

電車を眺めている僕にはまだ人生が定まっていなかった

北風が川原から窓に吹き付け窓枠が揺れてカタカタと鳴った

隙間風がスースーと入ってタバコの煙を揺らした

ちゃんちゃんこに万年床、部屋はまるで屋外の様に冷えた

それから何十年も経って僕は窓から眺めた鉄橋を渡っている

鉄橋を渡るほんの一瞬

あれも長い人生のほんの一瞬の過ぎ去った時間

膝を抱えて寒さに震えていた僕を探した

コメント
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