まだ2週間ほど前の去年の大晦日
京都から阪急電車の特急に乗って大阪の梅田に向かった
途中、急行も止まらない小さな駅をあっという間に通り過ぎ
安威川と言う名の川に架かる鉄橋を渡る
乗客の誰もが鉄橋を渡った事に気付かないほどのほんの一瞬
今からもう何十年も昔、十代の僕はその鉄橋を毎日、眺めて過ごした
鉄の窓枠と格子の入った年代物のガラス窓、割れたトタンの目隠し
三畳一間に小さな台所
朝、台所で顔を洗い窓を開けて頭をもたげると
雑草の生い茂った空地の向こうに鉄橋が見えた
京都から大阪へ
大阪から京都へ
茶色い車体の阪急電車が行き交った
色んな人生を乗せた電車が鉄橋を渡る
電車を眺めている僕にはまだ人生が定まっていなかった
北風が川原から窓に吹き付け窓枠が揺れてカタカタと鳴った
隙間風がスースーと入ってタバコの煙を揺らした
ちゃんちゃんこに万年床、部屋はまるで屋外の様に冷えた
それから何十年も経って僕は窓から眺めた鉄橋を渡っている
鉄橋を渡るほんの一瞬
あれも長い人生のほんの一瞬の過ぎ去った時間
膝を抱えて寒さに震えていた僕を探した