HIROZOU

おっさんの夜明け

スラム

2022-01-18 08:51:58 | メモリー

けっこう昨日の夜中は風が吹いて

ぴゅーぴゅーと窓の外に風が吹き付けている気配がした

寝付かれずベッドの上で寝がえりを繰り返していたら古い記憶が蘇った

大阪に住んでいた10代の真冬、三畳一間のアパートに冷たい風が吹き付け

鉄枠の窓ガラスをカタカタと揺らし隙間風が部屋中に吹き込んで来て

もう寒くて寒くて膝を抱えて震えていた光景だ

住まい運はすごくいい方だと思う

東京では一日中、陽も射さない部屋で布団も洗濯ものも干した事が無い部屋だったけど

場所は良かった・・・(坪500万超え)

社会人になった時、アパートは職場で用意してくれた

4所帯入ったアパートだったけど僕の部屋は前にアパートの大家さんが住んでいて

大きな庭と大きな風呂場が付いていた

難点は住んだ時点でまだ汲み取り便所だった

何日か経った頃、近所の住人から・・

「あなたが新しいこの‘スラム,アパートの大家さん?」

って聞かれて

「いえ!僕はここの部屋を借りているんです」

「そう、こんなところに住んだらえらい目に合うわよ」

って言われた

スラム・・・

近所の住人の方が言ったとうり凄まじい住人ばかりだった

郵便配達の方より借金取りの方が多くアパートに来た

あの頃の借金取りは夜討ち朝駆けは優に及ばず

僕の部屋にも借金取りが来て

「隣の部屋の親父、どこにいるか知らんか?」

としょっちゅう聞きに来た

隣の親父は僕の部屋にまで来て

「2千円、貸してくれ?」って来た

(貸さんかったけど)

隣の部屋の親父は毎晩酔っぱらってカラオケをかけていて

「私の大事なだんなさま~♪」

が夜中の2時頃に毎晩流れて来て

もうしょうがないので

「僕、明日も仕事なんですちょっと静かにしてくれますか~」

って言いに行ったら30分ぐらいして僕の部屋のドアをドンドン叩く音がする

ドアを開けたら隣の部屋の親父が立ってる

「若造のくせにえらそうな口を聞いたら刺すぞ!」

右手に包丁を握ってる

(ほんまやで~)

「すいません、すいません!」

ひたすら謝って刺されずに済んだ

あんなもん事を大きくしたらよけいややこしい事になった

何日かして隣の親父はゴミの山を残して‘夜逃げ,したから助かった

ある日、夏の暑い盛りの日曜日、部屋で寝てたら庭から大勢の声がする

「ほんとにここの住人達に困るわね、この部屋の男も自分で庭の草ぐらいとりなさいよ」

「みてこの庭の雑草、まるでジャングルじゃない」

なんと近所の方達が申し合わせて僕の部屋の庭の雑草を刈ってる

なんでも蚊が増えてしょうがないだと

草刈りが終わった頃に顔を出して

「どうもすいません」って頭を下げたんだけど

男の人が・・

「おたくの庭を片付けてたらビールの空き瓶が500本以上出て来たけど

僕の率いる少年野球チームで片付けるから」

とおっしゃった

わしもすっかり‘スラムアパート,の住人してたんだね

コメント
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