今日もひやいひやい
雪も見た事の無い南の田舎町から誰も知り合いのいない
聞いた事も無かった関東の街にやってきてもう何年たつんだろう
初めて就職の面接で常磐線に乗った時
両親と離れてどこまで遠くに行くんだろうととても心細かった
あの時、スリムのジーパンの似合う好青年は
使い古した野球帽の似合うひねくれたおっさんになった
還暦か・・・
うちの田舎では昔、今では見かけなくなった葬式の列に竹竿を担いだ人がいて
竹竿の先に竹かごを乗せてかごの中に硬貨の入った紙包を入れてあって
葬列に子供達が集まってくると子供たちの頭上で竹かごをゆする
そうすると硬貨が地面に撒き散らばって子供たちが我先に拾う習わしがあった
その紙包の中の硬貨の数はその亡くなったひとの享年の数だけ入れる
60歳の方が亡くなると10円硬貨60枚か100円硬貨60枚となる
断然100円硬貨の方が子供達は嬉しいんだが
それでどこそこでジジババが寝込んだとなると・・
(もうすぐ銭が拾える)
子供達はほくそ笑んだ
拾ったお金はその日に使わなくちゃいけないと言う不文律がって
葬式が終わると子供たちは‘おとく,ばあさんの駄菓子屋に駆け込んで
拾った硬貨分の買い物をする
駄菓子屋のおとくバアと言えば‘しぶちん,で有名だった
ある子が‘おとく,ばあさんに・・
「おばちゃん、おばちゃんの葬式の時は100円玉でお願いね」
と言っていたのを皆聞いていた
おとくばあさんが
「はいはい、わかった、わかった私の葬式は100円玉にするからね」
って言った
それから程なくして‘おとく,ばあさんの葬式が行われた
おとくバアの葬式に撒いた硬貨は10円玉だった
その葬式で行われる‘錢撒き,の習わしをするのが60歳以上からなんだ
まあ60歳まで生きたら大往生と言う事なんだろう
僕も‘錢撒き,の年齢に近付いたんだな