皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

関東の古社 浮島明神 鷲宮神社①

2018-06-05 21:27:25 | 神社と歴史

古代における武蔵国の地形を考察すると、西部には秩父、比企、入間等の山岳地帯を有し、東方に傾斜して児玉、大里、北埼玉、北足立、北葛飾、南埼玉の平野が広がりこの間荒川、入間川、多摩川等が流れている。古代東京湾は現在よりも一層深く北方へ流れ込み、一方は栗橋付近から埼玉郡の一部に及びいわゆる「埼玉の入り江」をなし、西北に伸びて大宮より川越付近まで海水に浸され、豊島足立にも入り江があったとされる。その後東京湾は退化し、南下するように現在の姿になったと考えられている。当時陸上交通と共に河川による交通は重要で物資、文化においても流通の手段であった。利根川、荒川等の各河川は古くよりこの低地における河川交通として利用されてきている。
 久喜市(旧鷲宮町)に鎮座する鷲宮神社の社伝に「浮島大明神」とあるのは古代においてこの近辺が海湾で島岬があったことを物語っている。浮島の名は一帯に広がる中川と利根川の乱流地域の低湿地から見るとまるで波間に浮かぶ島の様に見えたからだろう。

当地は古代から開かれた場所で境内地の堀之内遺跡からは縄文、弥生、古墳時代の遺物が出土しているという。
鷲宮神社は出雲族にかかわる関東最古の神社であるにもかかわらず、式内社から漏れたのは、おそらく当地一帯が先述の河川乱流区域で、『延喜式』編纂当時は開発が進んでおらず、この地を支配する氏族の力が弱かったと考えられている。

 
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古河市 鶴峰八幡神社

2018-06-03 23:24:45 | 神社と歴史

平安時代末期の治承四年(1180)源頼朝の命により下総、武蔵国の豪族たちは下河辺より挙兵し、富士川の合戦に向かいます。その際川沿いの小高い山に鎮座する稲荷様に戦勝祈願し、御神徳」を感じた頼朝は養和元年(1181)相模国に鎮座する鶴岡八幡宮より御神霊を勧請し、鶴ヶ峰八幡宮としました。
その後下総国一宮香取神宮が勧請され元禄元年相殿となったといいます。また中世においては新田義貞は北条時高討伐において、ここに参拝し、また古河に公方が遷る際にも足利成氏らが祈願しているといいます。

江戸に入ると徳川家康の命により河川事業が行われ、神楽も伝わり「中田永代太々神楽」と呼ばれます。この舞に使われる面には「享保十六年三月」の文字が残り、下総においては最古の」太々神楽だといわれているようです。(古河市無形文化財指定)
日光街道栗橋宿が開けてからは宿場の鎮守として栄え将軍の日光参拝に際しては、道中安全の五柱の神に足踏み祈願したと伝わります。

拝殿脇には足尾銅山鉱毒事件に際し、田中正蔵と共に活動した貴族院小久保城南の銅像が建てられています。鎌倉の遷座以降、度重なる水害により鎮座地も移り、また廃藩置県により千葉や埼玉に属した歴史もあるといいます。
幾多の歴史を重ねながら、国道4号日光街道奥に佇んでいます。
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加須市 戸川神社

2018-06-02 21:46:23 | 神社と歴史

加須市戸川は明治期の地租改正を機に寺ケ谷戸村と広川村が合併してできたという。「風土記稿」によれば寺ケ谷戸村の鎮守は愛宕社で、広川村の鎮守は弁天社。両村合併後もそれぞれ別々に祭が行われていたところ、明治四十二年弁天社は愛宕社合祀され社名を村名に合わせ戸川神社と改めている。この時村人たちは「弁天様が愛宕様に嫁に行った」と喜んだという。拝殿に掛かる扁額には「愛宕山」とある。近世における村の歴史を映し出しているようだ。ご祭神は迦具土神、市杵島姫命、瑞津姫命、田霧姫命。本殿には愛宕社、弁天社が並祀され、それぞれか勝軍地蔵像、弁財天座像を安置している。古くから氏子による崇敬厚く、境内地の整備も欠かすことがなかったという。
昔獅子廻しに使用したとされる鞍が残っていて、口碑によれば村の悪魔祓いが終わり神社参道に着くと、悪魔が入ってこないよう馬から降り、社殿に向かい全力で疾走したという。

現在、参道の先には東北自動車道が走るが、境内地周辺は風光明媚な水田が広がっている。
加須市内でも利根川岸から離れているように感じるが、境内社には宝暦の水難で困窮した村人を救った領主の功績を称える明和四年に建立した「相州宮」が残っている。まさに地域の暮らしや歴史を写す鏡のような神社で、境内地裏の貯水池には夕暮れの光が反射していた。

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