学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

レエン・コオトを着た男

2008-02-14 22:46:23 | 仕事
ここ数日、精神的なプレッシャーがきつくて、どうにもならない。仕事はたまる一方、山積みの課題をなんとか片付けようとするが何だか全く力が入らなくて、どうでもいいミスを連発する。それが時間のロスにつながって、また仕事がたまる。他のスタッフに指示して自分の山を少しずつ崩していく方法も考えたが、肝心の指揮系統の私が混乱していては、適切な指示もできない。これはまいった。

「レエン・コオトを着た男が一人僕らの向うへ来て腰をおろした。僕はちょっと不気味になり、何か前に聞いた幽霊の話をT君に話したい心もちを感じた。…」芥川龍之介『歯車』の一節である。芥川にとって、この「レエン・コオトを着た男」は死神の象徴だったのか。

実は今夜、仕事を終え、車に乗り込むと、美術館の駐車場に妙な人がいるのに気付いた。それは人?いや明らかに人だった。雨も降っていないのに、レエン・コオトを着て、右手に何かランプのような明かりを持っていた。私は不審者だと思った。だが、どうも様子がおかしい。まったく動きがない、生命力もない、じっと佇んでいるのである。私は眼鏡をかけて、もう一度見た。だが、男は確かにそこにいる。私はしばらくじっと見ていた。すると男が少し動きかけた。と思うと、男は目の前で消えてしまった。背中にぞくっとするものを感じた。私の幻覚だったのだろうか。思わず芥川の「レエン・コオトを着た男」を思い出した次第である。

私は疲れているのだろう。今日はもはや何をする気もない。また時間の流れに沿って生きる。とにかく、今日はもう疲れた。