学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

漫画を読むこと

2017-01-18 22:30:57 | その他
最近、『H2』といふ漫画を読んでゐる。ひと昔前まで、漫画は子どもの読みものと相場が決まっていたが、今は大いに出世して、大人も臆せず読める時代になったことを感謝しつつ、私も平気な顔をして読んでゐる。ただし、勇気がないので家で楽しむばかりなり。

『H2』は、あだち充さんの描く高校野球の漫画である。登場人物の国見比呂と橘英雄の頭文字Hがタイトルの由来なのだらう。あだち充さんといへば、『タッチ』が知られてゐるが、私にとっては『H2』のほうが懐かしくて親しみが湧く。私が学生の時分、教室での前の席に、坊主頭で背の高い運動の得意な同級生がゐた。彼がしきりに読んでいたのが『H2』で、私も彼から漫画を借りてよく読んでいたものである。

さういふ思い出が頭のなかをよぎりつつ、久方ぶりに読んでみると、『H2』の世界にはおっとりとした時間が流れてゐて心持ちが良い。コマとセリフに無駄がなくて軽快であるし、人物たちの言葉の掛け合ひは絶妙である。さらに言へば、人物の描写は筆のやうに、やわらかでなめらかなタッチであり、それが人間の温かみのやうなものを感じさせる。

あわただしい職場での一日を終へて、家で夕ご飯を食べたあとも、私はまだ漫画を手に取らない。私が漫画を読むのは、布団のなかにもぐってからと決めてゐる。薄明かりのなかで、空想と現実と夢のなかを行ったり来たりするのが好きなのである。いつも必ず夢の世界が勝つけれど、意識はいつのまにか薄れて、心地よい眠りに落ちてしまふ。今宵もそんな夜を過ごさう。