学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

芹沢銈介の作品

2017-02-01 20:55:24 | 展覧会感想
現在開催されている日本民藝館の「柳宗悦と民藝運動の作家たち」展では芹沢銈介(1895~1984)の作品を観ることができます。芹沢は型絵染の大成者であり、その明るく華やかな作風は今なお多くの人を魅了します。

芹沢はあらゆるものを模様に変えてしまう、いわば魔法のような力を持ってる作家です。彼の手にかかれば、《沖縄絵図》のように沖縄本島でさえ模様になってしまう。展覧会に展示されていた《伊曽保物語屏風四曲屏風》は、誰でも知っているイソップ物語を題材としたもので、話の一場面ごとに模様化して円状にまとめ、全体として屏風の装飾になるという作品。また、絵本『どんきほうて』はスペインの『ドン・キホーテ』を日本仕立てにしたもので、ドン・キホーテが日本の武者の姿となって旅をする、おそらく江戸時代の丹緑本を意識した手彩色による作品です。どちらも元の物語の舞台は海外なのですが、芹沢の手にかかると、これらは日本で生まれた話だったのではないかと勘違いさせるほど。装幀も見事で、長年に渡り雑誌『工藝』の表紙を型染布表紙で手がけたほか、展示されていたイギリスの詩人、画家のウィリアム・ブレイク(1757~1827)の著作の装幀は斬新であり、過去の作家ブレイクを装幀によって現在によみがえらせたかのような妙があります。

芹沢の作品は、これまで宮城県仙台市の芹沢銈介美術工芸館や静岡市立芹沢銈介美術館などで観たことがありますが、日本民藝館で改めて魅せられた気がしています。いずれまた両美術館へ行ってゆっくりと作品をみたいものです。