学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

文化と生活

2017-02-02 20:24:29 | その他
最近の私は「民藝」に心を奪われていて、観に行く展覧会も、夜中に布団の中で読む本も「民藝」がテーマになっています。

昨夜、柳宗悦の『民藝四十年』(岩波書店、1984年)の「日本民藝館案内」を読んでいて、ふと気になる一節がありました。それはこのような文言です。


「国家は少数の異常な人々を挙げて、その名誉を誇るかも知れない。しかし一国の文化程度の現実は、普通の民衆がどれだけの生活を持っているかで判断すべきであろう。」


文化の尺度はどれだけ我々の生活に根付いているかで示されるものである、と解釈できるでしょう。と、ここで柳と似たようなことを誰かが書いていた気がすると思ったのですが、肝心の名前が出てきません。寝たがる頭脳に対抗して、しばらく悶々としていると、英文学者の吉田健一(1912~1977)の名が浮かびました。たしか、彼は文化とは生活である云々と書いていたはず。吉田の著作がうちにあったな…と横になったまま目だけ本棚の背表紙を追う。けれど、このあいだ本を売ってしまったことをここで思い出し、しかたなくウェブで文言を探すことにしました。便利な時代になったものです。

すると、ありました。


「文化は生活の別名にすぎない」(『英国に就て』吉田健一著、筑摩書房、1994年)


吉田の場合は英国をテーマにしたエッセイで述べているのですが、文化と生活の関係性については近いところがあるのではないでしょうか。今日、「文化」というと壮大でとらえどころのない印象を与えてしまう言葉ですが、柳や吉田の言うとおりの解釈で良いのだとするのならば、これは大きな反省を強いることが私の身近にあって…と考えだしたところで、私は夢のなかに沈んでいったのでした。