学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

私と民藝

2022-01-16 10:12:12 | その他
先日、新聞の訃報欄で、美術史家の水尾比呂志さんが91歳で亡くなられたことを知りました。私は水尾さんと直接の面識はありませんが、水尾さんが編者として担当された岩波文庫の『美の法門』、『柳宗悦民藝紀行』などはよく読みましたし、そのなかの優しく、わかりやすい言葉による解説はとても勉強になりました。心からお悔やみ申し上げます。

若い時分、民藝のある暮らし、というライフスタイルにとても憧れました。柳宗悦の『手仕事の日本』を片手に、ずいぶん色々なところへ出かけたものです。道具は実際に使ってこそ意味がある、と思い、焼物なら、今でも私の茶碗は益子焼、急須は笠間焼、湯呑は備前焼、酒徳利(このごろ酒を飲まないので出番は限られますが)は平清水焼を大事に使っています。また、実際の着物は買えないので、小千谷縮のブックカバーなども買い求めました。私のあこがれは、今から10年ほど前に東京都美術館で見た「アーツ&クラフツ展」で再現されていた三國荘みたいな家。ああいう感じの家が欲しいなあ、と思いましたが、現実的な問題でそうそうに諦めました(笑)

現在、「柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年」展を東京国立近代美術館で開催しています。そのこともあってか、昨年は新日曜美術館で民藝特集、別冊太陽や芸術新潮でも民藝が取り上げられていましたね。100年前の美術の動きが、未だに息をしている。民藝の影響力を改めて強く感じました。コロナが落ち着いたら、また色々なところへ出かけてみたいものです。