学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

吉村昭『三陸海岸大津波』

2011-05-26 18:05:33 | 仕事
今日は仕事がお休み。掃除の続きをして、一日を過ごしました。

書店に行ったら、見かけた本。吉村昭氏の『三陸海岸大津波』です。いま、これを読まなくては、と買ってきました。これは吉村氏が岩手県、宮城県へ取材に出かけ、そこでの聞き取りや資料を元に書いたルポ。明治29年、昭和8年、昭和35年チリ地震津波について書かれています。読んでいて、津波の怖さに恐ろしくなる…。

明治29年の大津波。異常なほどの豊漁、井戸水の濁り、海面に浮ぶ謎の炎、大砲を撃つような轟音。津波の前兆にはそんなことがあったそうです。夜中に突如襲ってきた津波で、2万6千人が亡くなりました。

私が印象的だったのは、ある町長の案内で、吉村氏が明治大津波の生き残った古老にインタビューした場面。インタビューに、その古老は家の2階まで水が来た、と話します。吉村氏と町長は外へ出て、高台にあるこの家を見て絶句する。なんと平地から50メートルも高い位置に、その家があったから…。「今の防波堤は8メートルしかない。一体、大津波がきたらどうするんだ?」と町長は恐怖に慄くのです。

ルポには、三陸海岸に住む人たちは、これらの歴史を生かして、常に万全の避難体制をとっていることを記して、締めくくっています。これだけ避難体制をとっていても、あれだけの犠牲者を出したのだから、いかに東日本大震災の津波がものすごいものであったかを物語ります。

この本、手元に置かなければならない一冊だと思います。


●吉村昭『三陸海岸大津波』中公文庫 2004年

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