消費税が上がると、利益が膨らむ企業もあるのだ。事実は小説よりも奇なり。
(1)「輸出戻し税」
輸出に係る消費税はゼロで、輸出で稼ぐ大手企業に得な制度だ。
<事例1>売上高1,000億円、仕入額800億円の企業
売上高×5%-仕入額×5%=納税額
1,000億円×5%-800億円×5%=50億円-40億円=10億円
<事例1-2><事例1>の企業の海外売上高比率が50%の場合、計算式は次のように変わる。
(国内売上高×5%+海外売上高×0%)-仕入額×5%=25億円-40億円=▲15億円
⇒15億円は「輸出還付金」として企業に還付される。
大企業上位10社の還付金は、合計8,698億円【注】にのぼる。【湖東京至・税理士/元静岡大学教授】
消費税が上がれば、輸出還付金も増える。税率8%なら24億円、10%なら30億円になる。
経団連が消費増税に前向きなのは、輸出還付金の増加が見込めるからだ。
●問題点・・・・大企業は本当に下請け企業に消費税分を払っているか。1997年に消費税率が3%から5%に上がった時、大手業者との力関係のため増税分を転嫁できなかった中小企業(売上高5,000万円以下)が6割もあった(日本商工会議所の調査)。転嫁できなければ、還付金は大企業向けの輸出補助金でしかない。
【注】2010年度有価証券報告書に基づく湖東税理士の推計。ただし、キャノンは12月決算のため2010年のもの。
①2,246億円(トヨタ自動車)
②1,116億円(ソニー)
③987億円(日産自動車)
④753億円(東芝)
⑤749億円(キャノン)
⑥711億円(本田技研工業)
⑦633億円(パナソニック)
⑧618億円(マツダ)
⑨539億円(三菱自動車)
⑩346億円(新日本製鐵)
(2)事業者免税点制度
中小企業にも有利な制度がある。
(a)売上高1,000万円以下の事業者 → 免税
(b)資本金1,000万円未満、かつ、設立2年以内の事業者 → 免税
免税事業者でも、客から消費税を徴収してよい、という点がミソだ。客から見れば、どの業者が(a)~(b)なのか、わからないからだ。
<事例2>売上高800万円、仕入額360万円の事業者
売上高×5%-仕入額×5%=納税額
800万円×5%-360万円×5%=40-18=22万円
⇒差引22万円が国庫に入らず、事業主のポケットに入る(「益税」)。
●問題点・・・・(b)を悪用し、零細な子会社の設立と解散を2年ごとに繰り返し、課税逃れを図る業者がいる。
(3)簡易課税制度
もうひとつ、中小企業に有利な制度がある。
売上高5,000万円以下の事業者には、業種ごとに50~90%が一律に「みなし仕入れ率」が認められているのだ。
<例>保険代理店・飲食店は仕入れ率60%、不動産業・理髪店・弁護士などのサービス業は50%。
<事例3>売上高3,800万円、実仕入額1,400万円の保険代理店
3,800万円×5%-2,280万円【みなし仕入れ率適用】=80万円・・・・納税額
3,800万円×5%-1,400万円【みなし仕入れ率不適用】=120円・・・・簡易課税制度を適用しない場合の納税額
⇒差引40万円が国庫に入らず、事業者のポケットに入る(「益税」)。
●問題点・・・・「みなし仕入れ率」は、ほとんどの業種で実態との乖離が大きく、実際の仕入れより過大に設定されているため、税として客から徴収する分の一部が利益となる。だから、例えばドイツは簡易課税の対象を、日本よりぐんと狭い、年間売上高650万円以下の企業に限定している。政府は、みなし仕入れ率引き下げを検討しているが、業界団体は見直しに抵抗している。
(2)と(3)とを合わせると5,000億円に達する、と言われている。消費税収0.5%分に相当する巨額だ。【佐藤光一・税理士/元国税専門官】
以上、谷道健太(ジャーナリスト)「増税でトクする人々 輸出還付金を得られる大企業 「簡易課税」が駅用になる中小事業者」(「サンデー毎日」2012年7月8日号)および本田靖明(編集部)「消費税こんなに不公平」(「AERA」2012年7月2日号)に拠る。
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(1)「輸出戻し税」
輸出に係る消費税はゼロで、輸出で稼ぐ大手企業に得な制度だ。
<事例1>売上高1,000億円、仕入額800億円の企業
売上高×5%-仕入額×5%=納税額
1,000億円×5%-800億円×5%=50億円-40億円=10億円
<事例1-2><事例1>の企業の海外売上高比率が50%の場合、計算式は次のように変わる。
(国内売上高×5%+海外売上高×0%)-仕入額×5%=25億円-40億円=▲15億円
⇒15億円は「輸出還付金」として企業に還付される。
大企業上位10社の還付金は、合計8,698億円【注】にのぼる。【湖東京至・税理士/元静岡大学教授】
消費税が上がれば、輸出還付金も増える。税率8%なら24億円、10%なら30億円になる。
経団連が消費増税に前向きなのは、輸出還付金の増加が見込めるからだ。
●問題点・・・・大企業は本当に下請け企業に消費税分を払っているか。1997年に消費税率が3%から5%に上がった時、大手業者との力関係のため増税分を転嫁できなかった中小企業(売上高5,000万円以下)が6割もあった(日本商工会議所の調査)。転嫁できなければ、還付金は大企業向けの輸出補助金でしかない。
【注】2010年度有価証券報告書に基づく湖東税理士の推計。ただし、キャノンは12月決算のため2010年のもの。
①2,246億円(トヨタ自動車)
②1,116億円(ソニー)
③987億円(日産自動車)
④753億円(東芝)
⑤749億円(キャノン)
⑥711億円(本田技研工業)
⑦633億円(パナソニック)
⑧618億円(マツダ)
⑨539億円(三菱自動車)
⑩346億円(新日本製鐵)
(2)事業者免税点制度
中小企業にも有利な制度がある。
(a)売上高1,000万円以下の事業者 → 免税
(b)資本金1,000万円未満、かつ、設立2年以内の事業者 → 免税
免税事業者でも、客から消費税を徴収してよい、という点がミソだ。客から見れば、どの業者が(a)~(b)なのか、わからないからだ。
<事例2>売上高800万円、仕入額360万円の事業者
売上高×5%-仕入額×5%=納税額
800万円×5%-360万円×5%=40-18=22万円
⇒差引22万円が国庫に入らず、事業主のポケットに入る(「益税」)。
●問題点・・・・(b)を悪用し、零細な子会社の設立と解散を2年ごとに繰り返し、課税逃れを図る業者がいる。
(3)簡易課税制度
もうひとつ、中小企業に有利な制度がある。
売上高5,000万円以下の事業者には、業種ごとに50~90%が一律に「みなし仕入れ率」が認められているのだ。
<例>保険代理店・飲食店は仕入れ率60%、不動産業・理髪店・弁護士などのサービス業は50%。
<事例3>売上高3,800万円、実仕入額1,400万円の保険代理店
3,800万円×5%-2,280万円【みなし仕入れ率適用】=80万円・・・・納税額
3,800万円×5%-1,400万円【みなし仕入れ率不適用】=120円・・・・簡易課税制度を適用しない場合の納税額
⇒差引40万円が国庫に入らず、事業者のポケットに入る(「益税」)。
●問題点・・・・「みなし仕入れ率」は、ほとんどの業種で実態との乖離が大きく、実際の仕入れより過大に設定されているため、税として客から徴収する分の一部が利益となる。だから、例えばドイツは簡易課税の対象を、日本よりぐんと狭い、年間売上高650万円以下の企業に限定している。政府は、みなし仕入れ率引き下げを検討しているが、業界団体は見直しに抵抗している。
(2)と(3)とを合わせると5,000億円に達する、と言われている。消費税収0.5%分に相当する巨額だ。【佐藤光一・税理士/元国税専門官】
以上、谷道健太(ジャーナリスト)「増税でトクする人々 輸出還付金を得られる大企業 「簡易課税」が駅用になる中小事業者」(「サンデー毎日」2012年7月8日号)および本田靖明(編集部)「消費税こんなに不公平」(「AERA」2012年7月2日号)に拠る。
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